目次
Page 1
ー 始まりは喉の違和感 喉の奥に白い塊が……
Page 2
ー たった10日でステージが進行
Page 3
ー 心身にダメージを及ぼす 味覚障害との闘い

お酒も飲まず健康的な生活を送っていたのに、2年前のある日突然、喉にがんが見つかった。「人生の楽しみを奪われた」と、ふさぎ込み精神的に追い詰められたのは治療後、長く苦しめられた副作用だった。漫画家の松本ぽんかんさん(35)が語る「味覚7割、唾液は5割」しか戻らない現在の日々とは―。

「最初の告知は、“手術すれば治る”と思って、楽観的でした。でもその後、がんの恐ろしさを知ることになりました」と語るのは、漫画家の松本ぽんかんさん。始まりは、2023年の年末に気づいた喉の違和感だった。

始まりは喉の違和感 喉の奥に白い塊が……

「つばを飲むときに引っかかる感じがあって。そのときは軽い風邪かなと思っていました」(松本さん、以下同)

 しかし3週間たってもよくならず、少し痛みも出てきたため、近所の耳鼻科を受診。“軽い風邪”と診断されたが、処方された抗菌薬を飲んでも治らなかった。

「薬の種類を替えてもダメでした。さすがにおかしいと思い、スマホのライトで喉の奥を照らしてみたんです」

 すると、喉の奥の壁の左側に、白い塊のようなものが。

「ねばっこいものが喉にベタッと張り付いているような感じで。“喉の奥 白い”“喉 違和感”と検索しまくって、まさかがん!?と、悪い予感が。ろくに眠れず、何も手につかなくなりました……」

 3日後、別の耳鼻科を受診すると、「確かに喉の奥に腫瘍が見える」と、すぐに大病院を紹介される。

 紹介先の総合病院で告げられた検査結果は、「中咽頭がん」。診断は通常、内視鏡での観察と組織検査(生検)によって確定される。中咽頭がんは、喉の奥にある口蓋扁桃や舌の付け根、咽頭側壁などに発生。中高年の男性に多いが、近年はHPV(ヒトパピローマウイルス)関連で若年者にも増加。

 喉の痛みや飲み込みにくさ、声のかすれ、首のしこりなどが初期症状だが、松本さんはHPV陰性。喉の痛みの症状もまだ1か月。その段階では「初期なので手術で切除できる」との見立てだった。

 早めに喉の異物に気づけてラッキーだった(腫瘍に伴って出てくる分泌物やがん周囲の変化の結果として、喉に異物が見えることもある)と前向きに捉えた。しかし、この考えは、後に覆されることになる。

 告知後、転移の有無や病変の詳細を検査した結果、転移はなく、ステージは1との診断だった。ただし、腫瘍は1・8cmとさほど大きくないわりに、喉の後壁に深く浸潤しており、「手術で取るのは難しい」と告げられた。腫瘍を切除してしまうと、嚥下障害の後遺症が残り、ものが飲み込めなくなるとのこと。