目次
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ー これまでになかった“怪談”のテーマ
Page 2
ー ほかの朝ドラと『ばけばけ』の違い
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ー 史実に近いと、かなり“悲劇”に

 NHK連続テレビ小説(朝ドラ)『ばけばけ』の放送がスタートして7週目に突入した。評判はよく、視聴率は爆上がりしているわけではないが“優等生”と言える数字を維持している。

これまでになかった“怪談”のテーマ

 朝ドラのコンセプトといえば主人公の成長・立身出世物語で、オリジナルの物語もあるが、描かれるのは歴史に名を連ねた人物であったり、あるいはその妻であることが多い。そして、“朝ドラヒロイン”というワードがあるように、主役もたいてい女性だ。『ばけばけ』も例に漏れず、主人公は女性で、著名な作家の妻。そして困難に立ち向かいながら成長し、夫が功成り名を遂げるまで支え続けるのはほかの朝ドラと同じ。

 だが、『ばけばけ』は「これまでの朝ドラとはどこか違う」と感じている視聴者は多いだろう。

 ヒロイン・トキのモデルとなっているのは、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の妻である小泉セツ。八雲といえば、「怪談の書物は私の宝」と語っていたように、古くから伝わる日本各地の怪談や奇談、民間の伝承を集め、『耳なし芳一』『ろくろ首』『雪女』などの話を“怪談”という文学作品として一冊にまとめあげた、いわば“ホラー作家”だ。セツは八雲に説話を伝承し、また日本の書物を読み聞かせて、作品の素材を提供していたと言われている。

 作中で、トキは小さいころから、何か嫌なことがあると“子守歌”のように母親に怪談を語ってもらい、気を紛らわしていた怪談好きという設定。概ね史実通りで、怪談はこのドラマのテーマの1つであることが分かる。

「『あんぱん』は漫画、『おむすび』や『ごちそうさん』は食、『スカーレット』は焼き物、『まんぷく』はインスタント麺など、朝ドラによっては“サブテーマ”が用意されているものがありましたが、怪談は今までにありません。小泉八雲が怪談の作者であっても、妻がヒロインとなると聞いたとき、これまでの朝ドラのように、夫を支える妻の話なんだろうな、くらいにしか思いませんでした。物語に怪談が深く関わってくるとは正直、予想できませんでしたね」(テレビ誌ライター)