「毎朝、職場の駐車場にマイカーを止め、車中から周囲を見渡します。山に近い薮などに“怪しい影”がないかチェックしてからドアを開け、薮に背を向けないで後ずさりするように建物に入ります。クマが出没しない都会に住んでいる人には、この恐怖はわからないでしょう」
長野県に住む40代の男性会社員はそう話す。
“過去最悪”のクマ被害
この男性は数年前、林道をジョギング中にクマに遭遇した経験がある。血の気が引いて身動きが取れず、「周囲の木に紛れてやり過ごしました。あまりに衝撃的だったので、その日を境にジョギングはやめましたね」と言う。
環境省がホームページで公開しているクマの生態によると、北海道にヒグマが、本州と四国にツキノワグマが生息し、11月下旬から12月ごろには冬眠に入るとされる。
2025年度のクマ類の捕獲数は9867頭(10月末暫定値)。11月末までに人身被害は230人、死亡者は13人といずれも過去最悪だ。11月下旬以降も各地で出没が続く。
栃木県鹿沼市では11月23日、自宅の庭で作業中の74歳男性が体長約1メートルのクマに襲われ顔と上半身にケガ。岩手県釜石市では11月26日、市の判断による「緊急銃猟」で体長約1・2メートルのクマ1頭を駆除した。
福井県勝山市では11月27日、集落の自宅敷地内で80代男性がクマに襲われて顔や両腕にケガ。秋田県横手市では12月2日、住宅街の空き家の小屋に体長約1メートルのクマが侵入し、麻酔の吹き矢で捕獲、駆除したという。
同県での自衛隊のクマ捕獲支援活動は予定どおり11月末で終了したばかり。
秋田県・鳥獣保護管理チームの担当者は言う。
「夏から秋にかけてクマの目撃例は激増しましたが、10月に比べ11月は出没件数が減っています。5月から県内にはクマ出没警報を出しており、人身被害や出没件数を過去5年のデータと比べるなどして警報期間を再再々延長し、12月末まで延ばしました。12月下旬にさらに延長するか判断することになります」














