スーパーの買い物客まで…

 群馬県沼田市では11月28日午前1時過ぎ、JR沼田駅前の公衆トイレ内で69歳の男性警備員が体長約1〜1・5メートルのクマに襲われ、足を引っかかれて軽傷を負った。10月には市内のスーパーに体長約1・4メートルのクマが侵入し、買い物をしていた男性客2人がケガをする被害もあった。

駅やスーパーにクマが出没する事例は、少なくともここ数年はありませんでした。あるとすれば、山ぎわに近い集落や畑で見かけたとか、農園のリンゴが食べられたりする被害でした。移動経路をたどって周辺に聞き込みし、通りそうな場所に箱わなを仕掛けています。おびき寄せるエサは売り物にならない柿やリンゴのほか、ハチミツが好きらしいので蜜の搾りかすなどです」(同市のクマ対策担当者)

東京都青梅市のハイキングコース入り口には「クマ出没注意」の張り紙が。一部通行止めになっていた
東京都青梅市のハイキングコース入り口には「クマ出没注意」の張り紙が。一部通行止めになっていた
【写真】恐怖!「柿の木」に登って半日居座った野性のクマ

 その“大きな影”に怯えてか、別の動物と見間違えたとみられるケースもある。

 埼玉県飯能市で10月4日、同6日、11月17日にクマの目撃情報があった。小学校や公園に近い住宅街だ。

「目撃情報があれば、市の職員と地元猟友会のメンバーですべて現地を確認しています。3件ともクマの足跡やフンはありませんでした。代わりにあったのが蹄の跡です。クマは5本指で肉球がありますから明確に異なります。目撃情報を防災無線で流すと、ほかの住民から“私、同じ時間に同じ場所で黒いカモシカを見ましたよ”と情報が寄せられたこともあり、99%カモシカの見間違いだったと判断しています。近隣住民の多くは、このあたりに黒い毛のカモシカが生息しているのを知っているのです。しかし、たまたま通りかかった人がその背中だけを見たら“黒い大きな獣”なのでクマと勘違いするかもしれません」(飯能市・鳥獣被害対策室の担当者)

 例年、同市のクマ目撃情報は5、6件程度にとどまるところ、今年度は11月末時点で29件と約5倍となっている。東京都青梅市に隣接する同市の山間部などではクマが捕獲された実績があるため、警戒を緩められない。