2023年5月、食事に行った際にツーショットの写真を撮影した遠野なぎこさん(左)と小原ブラス(右)
2023年5月、食事に行った際にツーショットの写真を撮影した遠野なぎこさん(左)と小原ブラス(右)
【写真】元気そうな表情を浮かべて…遠野さんが親友と撮ったWピースショット

 そうしたやりとりの中で、遠野さんが口にした“私たちは世の中に迷惑をかけないように生きようね”という言葉が今も印象に残っている。

キツイことを言うイメージがあるかもしれませんが、実際は人の痛みにすごく共感することができて、他人の痛みを自分の痛みのように感じる人でした

 テレビで見せる姿とは異なり、人の痛みや苦しみに誰よりも敏感だった。

食べ物にはほとんど手をつけず

「仲よくなりすぎると、相手を傷つけないように、あえて離れていくこともありました」

 それが彼女なりの、人との向き合い方だったのかもしれない。遠野さんと小原は食事にもよく行ったが、食べ物にはほとんど手をつけなかった。病気や家庭の話題には触れず、世間話だけを交わす。その距離感が、2人の心地よい関係を保っていた。

「遠野さんは決して“かわいそうな人”じゃない。苦しさを知っているからこそ、小さな幸せを誰よりも感じることができる人でした。70歳とかの彼女も見たかったですが、遠野なぎこという人生をやりきったと思います。もし、言葉をかけられるなら、来世では、ごはんをお腹いっぱい食べてね、ですかね」

 幸せと痛み、その両方を抱えながら生きた45年。その姿は、近しい人の胸に、静かに残り続けている。