陥没現場から約20メートルのところに住む飲食店経営・松井多恵子さん(81)は言う。
「約3週間の避難生活を経て自宅兼店舗に戻ると、カウンターの下に置いていたコーヒーを淹れる銅製ポットが真っ黒になっていました。こんなポットで淹れたコーヒーを飲みたいですか。通行止めでお客さんが入ってこられないから1年休業中です。常連客から“大丈夫か?”と何度も連絡をもらうんですけど、揺れるし臭いし“大丈夫じゃないのよ”と答えています。鬱になっちゃいそうですよ」
県は2025年8月、現場から約200メートル以内の住民らを対象に説明会を開き、家屋損傷や余計にかかった電気代を補償することなどを示した。一般家庭については、生活への支障や負担を長期間かつ多岐にわたりもたらしたことに対して「その他の補償」とひとくくりにして、一律で1世帯3万円と家族1人当たり2万円を支払うとされた。しかし、位置関係などで被害には濃淡があり、「その他」に何が含まれるのか判然としない。
この空気を吸い込んでいたら早死にする
木下さんは同9月、近隣の100世帯以上に健康・環境・財産被害や不安などを尋ねるアンケート調査を行った。すると、頭痛や血圧低下、せき、ぜんそくの悪化のほか、
《夜に下水の臭いで目が覚めたり、お風呂に入っているときに臭いがして吐き気がする》
《子どもを外で遊ばせることに抵抗を感じる》
《今後何年もこの空気を吸い込んでいたら早死にする》
などと訴えがあった。
「事故から丸1年となる2026年1月28日までに『被害住民の会』を立ち上げたいと考えています。現場作業員は頑張ってくれています。県も頑張っていると感じながら私たちはそれに寄り添うので、県のほうも、ここに住んでいる人の気持ちに寄り添ってほしいです」(木下さん)
前出の松井さんも、「住民一緒のほうが行動しやすい」と、会には参加するという。
復旧への道筋はまだ遠い。同県下水道局の建設担当者によると、新しい下水道管を2025年末に設置完了し、管の内側の腐食防止処置を2026年1月に実施予定。同2、3月ごろには密閉された新しい管に下水を流せるようになるため悪臭軽減が期待される。さらに再発防止のため管の複線化を検討しており、その場合は工事完了まで5年〜7年程度かかる見込みだ。
「次回の住民説明会の予定はありません。住民には“かわら版”で最新情報をお伝えしており、説明会は必要に応じて開くことになります」(同県下水道局の補償担当者)
近隣住民が一日も早く安眠できるよう、県は誠意を持って取り組んでもらいたい。











