歌舞伎・新派という垣根を飛び越えて、若い役者との交流もあると聞く。お酒を飲みながら、彼らと語り合い、時には悩みや愚痴を聞くこともある。
新派の舞台の美も伝えていきたい
「若手の歌舞伎役者たちとも仲良くしているんだけれども、息子のような世代の子たちは可愛くてね。御曹司や大部屋の子たちともよく話しますよ。私は大部屋も主役も経験し、両方の気持ちがわかるからこそアドバイスできることがあると思っています」
吸い込まれるような瞳で、ちゃめっけたっぷりに語る雪之丞さんだが、縦横無尽に演劇界で活躍する彼を深く知ることのできる一冊が、2025年11月に発売された『血と芸 非世襲・女方役者の覚悟』(かざひの文庫)だ。
映画『国宝』の大ヒットによって多くの人が歌舞伎や伝統芸能に目を向けるようになった今、どんな気持ちで同書を記したのだろうか。
「ぜひ、ノンフィクションの『国宝』と思って読んでみてください(笑)。忖度なしに書いたつもりです。歌舞伎の御曹司たちの彼らなりの苦労や、大部屋の役者たちがいるからこそ、歌舞伎の舞台が輝くこともわかるでしょう。
『御曹司VS大部屋俳優』の単純な格差社会の図式じゃなくて、もっと深いところを伝えたいと思いました。友人の歌舞伎役者からは『ずいぶんギリギリまで攻めてて、なかなかいいじゃない!』って言われましたね(笑)。これを読んで、歌舞伎や新派、そのほかの日本の伝統芸能の舞台にも、若い人たちに足を運んでいただきたいですね」
歌舞伎を「旧派」として明治時代に生まれたのが、雪之丞さんが現在籍を置く「新派」という演劇だ。それでもすでに130年以上の歴史がある。最後にその見どころや今後の展望なども聞いてみた。
「新派の芝居は、表現を削った先にある大切なものを見せていくもの。歌舞伎の間や所作を理解していないとできない演技です。できるけれどやらないって、とってもおしゃれでしょう?
また、日本語の美しさも堪能できます。『風もないのに 騒々しい 咲いた桜が怯えるわねえ』って、泉鏡花(が原作)のセリフなんだけど、グッときますよね。今後は、そんな新派の作品の素晴らしさを伝えつつ、『女方新派』をもっと復活させたいと考えています。朗読も好きなジャンルですね。好き嫌いをせず、いろいろ挑戦していきたいと思っています」
取材・文/三尋木志保
かわい・ゆきのじょう 1970年、東京都生まれ。'88年、国立劇場歌舞伎俳優研修を修了し、三代目市川猿之助(現・二代目市川猿翁)に入門、二代目市川春猿を名乗る。'94年に三代目市川猿之助(二代目猿翁)の部屋子となり、2000年、スーパー歌舞伎『新・三国志』の彩霞役で名題昇進。'07年、第28回松尾芸能賞新人賞を受賞。'17年、劇団新派へ移籍、「河合雪之丞」に改名(屋号は白兎屋)。古典・新作歌舞伎から新派と、幅広い芸域を誇る希代の女方。












