メジャーリーグでの前人未踏の活躍に加えて、真美子さんとの結婚、愛犬デコピンとの生活、そして待望の長女誕生──。大谷翔平の快進撃は今回のWBCでも止まらないだろう。まさに順風満帆に見えるその姿だが、大谷は決して平坦な道を歩んできたわけではない。記憶に新しいのは、「信頼していた相棒・水原一平氏による巨額横領と裏切り」という衝撃的な事件だ。
大谷翔平が愛読していた「中村天風の哲学」
家族同然に過ごしてきたパートナーからの裏切り。金銭的被害もさることながら、その精神的ショックは計り知れない。普通なら人間不信に陥り、プレーに精彩を欠いてもおかしくないほどのダメージだったはずだ。
だが、大谷はその騒動の渦中にあっても平常心を保ち、結果を残しただけでなく、プライベートでも揺るぎない愛と幸せを掴み取ってみせた。なぜ彼は、トラブルに見舞われても「不幸」に引きずり込まれず、常に「幸せ」なオーラを放ち続けられるのか。
そのヒントは、大谷がメジャーリーガーになる前から愛読していた明治生まれの思想家・中村天風の哲学にある。大谷の日本ハム時代の恩師・栗山英樹氏は、以前ある大学の講演の中で大谷の愛読書として中村天風の著書を挙げた。これをきっかけに、近年、中村天風の教えが再び注目を集め、関連本の出版も相次いでいる。
昨年10月発売の『中村天風 人生の「主人公」になる教え』の著者・堀田孝之さんはこう分析する。
「天風哲学の根幹にあるのは『絶対積極』という教えです。これは、どんなにひどい出来事が外の世界で起きても、自分の心だけはその影響を受けず、常に清らかで前向きな状態を保つということです。大谷選手が見せたのは、まさにこの心のあり方でしょう」
多くの人は嫌な出来事があると、「あいつのせいで」と恨んだり、「なぜ自分がこんな目に」と悲観するなど、心の中に「闇」を持ち込んでしまう。その闇が悪運を引き寄せ、人生は思いどおりにいかなくなる。
だから天風は、「心の置きどころを変えよ」と説く。何が起きても、心を「絶対積極」にすれば、どんな困難も乗り越えられる、と。水原氏の事件は変えられない事実だが、それに心を支配されるかどうかは自分で決められるのだ。
大谷は、済んでしまった過去(裏切り)に執着して心を曇らせるよりも、今ここにある野球、そして真美子さんや新しい家族との愛という「光」の部分に、心のフォーカスを強烈に当てたのだろう。
「幸せの軸を他人の言動や環境に委ねてはいけない。何が起きても『自分は大丈夫』と自分自身を信じ抜く力。それこそが、最強の運気を引き寄せるのです」(堀田さん)
大谷のように、我々の日常にも予期せぬトラブルは降りかかる。だが、嵐の中でも「私の幸せは誰にも邪魔させない」と心を気高く保つこと。それこそが、自分自身を人生の主人公にする第一歩なのだ。






















