がんで悩む人たちの受け皿になれたら
漫画家として活躍する夢野さんだが、それ以外にも仕事をしており、再建手術後に転職を果たした。今は、その仕事にも夢中なのだとか。
「乳房再建のために長い休みをとる必要がなくなったので、今なら転職できるかも、と以前から興味のあったリラクゼーションセラピストになりました。お客様の身体をほぐして、安心感を与える仕事で、自分にとても合っていると思います。
ツボを押しながら、お客様の体調について聞いたり、大きい病気を経験された方には自分の体験談をしたり、毎日充実しています」
がんを経験しても、新しい挑戦はできるんだよ、と伝えたくて─そういった、がんサバイバーとしての実体験をSNSで発信している夢野さん。
「著書の『乳癌日記』も、もともとSNSで発表していたもの。無理せず少しずつアップしていたら、それをいろいろな人が見てくださって、とても励みになりました。一冊になった本を同人誌のイベントで売っていたときに、私のSNSを見ていたというお客様が来てくださって、ご自身やご家族のがん治療の経験を話していかれるんですね。
普段は病気の話はしないけれど、同じ経験をした人には話をしやすいのかもしれません。自分の漫画が、そういう皆さんの受け皿になっていたと思うと、うれしくなりましたね」
イベントで販売していた本は編集者の目に留まり、やがて『乳癌日記』として出版社から発刊されることに。
「本を読んで、お手紙をくださった方もいました。その方は脳のがんだったらしく、次はこんな治療をするんです、今はこんな状態です、と何回かやりとりしていましたが、ある日、ご家族から『亡くなりました。今までありがとうございました』というお礼の手紙が届きました。やはり、がんは難しい病気なんだとあらためて実感し、寂しい思いをしました」
2025年には、『乳癌日記』の続編として、友人の闘病記を描いた『続乳癌日記』を刊行した。
「友人から、実は末期の膵臓がんでずっと治療していて、途中で乳がんにもなったりしたけど、『今は寛解したよ』という連絡をもらったんです。それはすごいと思って。世の中のがん患者さんにも知ってほしいと思い、『漫画にしてもいい?』と打診したんです。
膵臓がんは治療が難しいがんで、残念にも亡くなる人も多い。あくまで、“治った事例もありますよ”という紹介であれば、という条件付きでOKをもらいました。友人は取材中も元気で、体調を全く心配することもなく、ひたすら『よかった』と思いながら描きました」

















