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ー 太田光とビートたけしの政治批判の違い

 宝泉薫さんによる『週刊女性』の名物連載「人生アゲサゲ分かれ道」。今、ニュースな爆笑問題の太田光さんを取り上げます!

太田光とビートたけしの政治批判の違い

 爆笑問題の太田光が、自分とビートたけしとの違いについて語った。どちらも毒舌が売りで、社会に物申す的なスタンスが似ているが、ネットメディアの編集長が、「たけしは笑えて、太田は不快なんですよね」と、発言。

 これを知った太田が、自身のラジオ番組で、「おまえの考えている違い、40年近く、ずっと考えていること。(略)それがおまえにわかるわけないよ、バカ」と、反発してみせたのだ。

 これを機に、SNSでは両芸人のファンの言い合いが勃発。たけしの相方だったビートきよしまで参入して「まねしてもなれないからね」とアドバイスを送った。

 ただ、太田は「才能の違い」だとしたうえで、「それを言っちゃうと、俺は終わっちゃうから、そうじゃないだろっていう前提でやってるの」と、自虐的なことも言っている。

 そこから伝わってくるのは、太田が自分でも「不快」がられているという認識を持っていることだ。その認識は特に、最近強まっているのかもしれない。

 今年2月、TBS系の選挙特番で高市早苗首相に対し、公約が実現できなかった際の責任を追及。「なんか意地悪やなぁ。最初からでけへんと決めつけんといてください」
と返され、太田が失礼だったのでは、と炎上した。

 その後、上田晋也(くりぃむしちゅー)との対談動画で「世の中の反応はかなり意外でした」と振り返り、「好きな子には意地悪したくなっちゃう」と、キレの悪い言い訳までしている。

 ではなぜ、たけしほどにはうまくいかないかといえば、まずは人たらし能力の不足が大きい。そのあたりは、古舘伊知郎などにも通じる弱みだ。

 そしてもうひとつ、たけしが政治批判を笑いの延長でちょっとふざけながらやっているのに比べ、太田はそれを笑いとは別のものとして大マジメにやっている。なにせ『憲法九条を世界遺産に』という本を学者との共著で出しているほど、思想が強めの人だ。選挙特番などではそのあたりが見え隠れしてしまい、不快がられたりするのだろう。

 もちろん、同じ思想の人たちからは支持される。そのジャンル(?)の芸人には今のところ、ラサール石井や松尾貴史、村本大輔(ウーマンラッシュアワー)くらいしかいないから、大歓迎されるわけだ。

 ただ、一部ウケしかしないし、前述の炎上みたいなことも起きやすくなる。こうした傾向、思想が右か左かは関係ないようで、立川談志さんも国会議員になって自民党に入ったあたりでやや失速した。太田とは顔も芸風も似ていて「親子説」も飛び出すほど仲もよかっただけに、気になるところだ。

 一方、たけしやタモリ、明石家さんまには強めの思想がないので、広範囲に支持されやすい。「お笑いビッグ3」とも呼ばれるゆえんだ。

 ちなみに16年前、太田は週刊誌でこんな発言もしていた。「たけしさんは『TVタックル』で何も言わないでしょ。あれは芸人としてカッコいいんですよ。(略)野暮が嫌いだからマジな話にしない」。それと比べて「言いたがり」な自分はカッコ悪いとも言っていて、彼もわかってはいるのだ。

 要するに、芸と思想は相性が悪い。まして、笑いと政治批判の二刀流を本格的にやるのは不可能だ。人たらしの能力うんぬんはともかく、たけしのやり方を参考にした軌道修正ならアリなのではないか。

 おせっかいを承知で言うなら、まねすべきは毒舌より、そのスタンスなのだから。
 

ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。