バブルの熱狂を背負った「甲斐の虎」

・2位 武田信玄(1988年)39.2% 主演:中井貴一

 第2位は、平均視聴率40%にあと一歩まで迫った『武田信玄』。

「主演の中井貴一さんが瑞々しくも威厳のある信玄を演じ切り、日本中が『風林火山』の旗印に熱狂しました。ライバル謙信役の石坂浩二さんの美しさ、そしてバブル絶頂期の潤沢な予算を投じた豪華絢爛な合戦シーン。お茶の間のテレビが最大の娯楽だった時代の熱量が、この数字にそのまま表れています」

 そして堂々第1は今なお「大河の最高傑作」との呼び声高いこの作品だ。

・1位 独眼竜政宗(1987年)39.7% 主演:渡辺謙

「当時27歳の渡辺謙さんの、画面を突き破るような眼力とエネルギーは衝撃的でした。脚本のジェームス三木氏が圧倒的なスピード感とエンターテインメント性を注入し、さらに勝新太郎さんの秀吉、津川雅彦さんの家康という怪物級のキャストが脇を固めました。この39.7%という数字は、単なる記録ではなく、一つの時代の“到達点”と言えるでしょう」

NHK大河ドラマ『独眼竜政宗』の撮影現場を見学される天皇陛下(1986年、当時は皇太子さま)
NHK大河ドラマ『独眼竜政宗』の撮影現場を見学される天皇陛下(1986年、当時は皇太子さま)
【結果一覧】大河ドラマ歴代視聴率TOP10をイッキ見

 こうしてトップ10を振り返ると、ある傾向に気づく。1位から10位のうち、実に6作品が1980年代の作品なのである。なぜこの時代、大河ドラマはこれほどまでに強かったのだろうか。

要因は大きく3つあります。まずはジェームス三木氏や橋田壽賀子氏という二大巨頭の存在です。彼らは格調高い歴史劇の中に、現代にも通じる“家族の愛憎”や“ホームドラマ”の要素を融合させ、歴史に詳しくない層をも虜にしました。

 次に、キャスティングの劇的な変化です。それまでの大御所映画スター中心の配役から、渡辺謙さんや中井貴一さんのようなテレビ発の若きエネルギッシュな才能を主役に抜擢し、脇を圧倒的なベテランで固める布陣が完成しました。3つめがバブル経済という時代背景です。右肩上がりの社会が生む巨大な熱量と、潤沢な制作費による大人数の合戦シーンなど壮大なスペクタクル映像が、当時の視聴者を釘付けにしました」

 そしてもう一つの共通点が豊臣家への愛着だ。トップ10のうち半数が秀吉やねね、あるいは豊臣家を軸とした物語となっている。「日本人は秀吉のサクセスストーリーと、それを支える家族のドラマが大好きなんです」と前出のライターは語る。

 2026年の『豊臣兄弟!』は、まさにこの高視聴率のDNAである「豊臣家」と「家族の絆」を、これまでとは異なる“弟・秀長”の視点から描き直そうとしている。数字の高さだけが価値ではないが、かつての黄金時代がそうであったように、月曜日に「昨日の大河見た?」と会話が弾むような熱狂が、再びお茶の間に戻ってくることを期待せずにはいられない。