『笑点』は時代の写し鏡!?名物だった“罵倒合戦”が鳴りを潜めたわけ

 60年も続けていれば変わってしまうものもある。その一つが『笑点』名物の“罵倒合戦”だ。

 そもそもの始まりは、三遊亭小圓遊が出演していた時代までさかのぼる。小圓遊が歌丸に「ハゲ!」と口撃するや、即座に歌丸が「バケ!(バケモノ)」と応酬。時には、お互いの家族でさえ標的にするほどヒートアップしたが、これが視聴者に大ウケし、小圓遊が亡くなる'80年まで2人の“罵倒合戦”は続いた。

 このイズムが、のちに「木久蔵ラーメンはマズい」「(五代目)圓楽は借金で首が回らない」といった他出演者に飛び火する形で受け継がれた。また、木久蔵がいきなり持ち歌のお色気ソングを歌い出すなど、今思うとハチャメチャな展開で視聴者を楽しませたものだった。

頻繁に口撃のネタとなった「木久蔵ラーメン」
頻繁に口撃のネタとなった「木久蔵ラーメン」
【画像】『笑点』60年の歴史をイッキに振り返り!歴代メンバーの変遷

 だが、何かとコンプライアンスが厳しい時代。昨今は、その応酬にも変化が。渡邉さんはこう指摘する。

ルッキズムを考慮して、容姿の悪口はなくなりました。また、かつては独身だった昇太さんをいじるといったこともありましたが、今はそうしたデリケートな話題は極力避けるようになっている

 時代とともに『笑点』をパッケージする包装紙も変わっているということか。ちょっと物足りなさはあるけれど……。

寄席というのは、世の中を表しているところがあって、流行を取り入れたり、逆にそぐわなくなったものを淘汰(とうた)していく装置でもある。例えば、古典落語の金銭絡みの噺に『持参金』という演目があるのですが、今の時代では不快に感じる人もいる。

 そのため、『持参金』を禁止にしている演芸場もあるほどです。時代にそぐわなくなれば消えていく。それも落語の歴史なんですね」(渡邉さん)

 手を替え品を替え。そうして落語は、『笑点』は、愛され続けてきた。番組を立ち上げた立川談志は、自著『現代落語論』で「落語が『能』と同じ道をたどりそうなのはたしかである」と記している。落語が大衆からそっぽを向かれないように──。

『笑点』が60年も続いているのは、変化を恐れない柔軟な姿勢があるからだろう。

林家木久扇
林家木久扇

渡邉寧久●演芸評論家兼エンタメライター。東京新聞、ENCOUNT等にコラム執筆中。文化庁芸術選奨、花形演芸大賞、浅草芸能大賞選考委員等歴任。江戸まちたいとう芸楽祭実行委員長。2025年8月より、東京新宿二丁目のミニ演芸場「シン・道楽亭」を運営。著書に『落語家になるには』(ぺりかん社)など。


取材・文/我妻弘崇