阪神・森下翔太が球審のストライク判定に不満を示した一球。ネットでも物議を醸した
阪神・森下翔太が球審のストライク判定に不満を示した一球。ネットでも物議を醸した
【写真】退場処分のきっかけ、森下がブチ切れた疑惑の「ストライク判定」

 片やNPBではーー、
 
「俺がルールブックだ」

 かつて「東京巨人軍」の初代背番号1を背負い、1937年から審判員に転身して以後、パ・リーグ審判部長などを務めて実働26年、1963年に引退した“名審判”二出川延明さん(享年88)の言葉だ。

 1959年7月の毎日大映オリオンズー西鉄ライオンズの試合で、二塁クロスプレーでのセーフ判定に猛抗議した、当時の西鉄・三原脩監督(享年72)から「ルールブックを見せてくれ」と詰め寄られた際に、二出川さんが「その必要はない。俺がルールブックだ」と、三原さんの抗議を一蹴してみせたセリフとされている。

 いかにも“昭和”的発言に思えるが、近年のプロ野球の試合を任される審判員には「俺がルールブック」と言えるだけの経験と技術が備えられているという。長年、プロアマを含めた野球の現場を取材してきたベテランライターの話。

アマ野球で「抗議」はほとんどない

「たとえば学童野球から高校野球といったアマチュア試合で見かける審判ですが、各都道府県や市町村の各野球連盟で登録された審判員が務めています。そのほとんどが各チチームに所属していたコーチ、はたまた“お父さん審判”をきっかけに本格的に審判を目指した人たちが派遣されています。

 そして各連盟、支部会によって定期的に開催される審判講習会や研修会に参加して、基本的なコールやジェスチャーのやり方から、実践的なプレーにおけるジャッジなど、オジサンたちが一所懸命にグラウンドを走り回って声を張り上げて、審判の練習をしているのです」

「公認審判員」ライセンスを要する高校野球では交通費ほどの“手当て”が支給されるものの、審判員は基本的にボランティアであって無給。それは甲子園大会といった全国大会でも同様で、球児たちのため、試合のために各々が休日返上して日々努めているようだ。

「その背景を知っているからこそ、たとえ明らかなミスジャッジが起きたとしても、自軍選手が不服そうな態度をとっても、アマチュア現場で審判員に抗議する監督やコーチはほとんど見かけません。彼らに感謝とリスペクトを持ち、審判である前に人間として向き合う姿勢があるからです」(前出・ライター、以下同)