リンパ節に転移していたこともあり、念のために抗がん剤治療を提案される。

「これまで前向きに治療してきましたが、抗がん剤はすぐには受け入れられませんでした」

わかっていても実際に脱毛を体験すると涙が

 3週間に1回の抗がん剤治療を8回、それが終了したら放射線治療なども行う予定だという。

「主治医から『転移の可能性は30%。それほど高いリスクではないので、抗がん剤治療は受けなくてもいい』と言われ、反対に決心できました。不安はすべてなくしてしまいたかったのです。とはいえ、抗がん剤はとてもきつく、心身共に疲弊しました」

 抗がん剤の主な副作用は吐き気と微熱。1回目の投与では胸焼けのような症状もあり、トイレに一晩中こもったことも。2回目以降は副作用を軽くする注射を打ってもらい、症状は少しだけやわらいだ。

 抗がん剤は種類が変わると、副作用も違ってくる。もっともショックだったのは脱毛だという。

「髪の毛が抜けたのは、最初の抗がん剤を投与して3週目ぐらいのとき。お風呂場でシャンプーをしたら髪の毛が止めどなく落ちてきて、驚きと同時に涙があふれました。乳がんが見つかって、初めて泣きました。脱毛するとわかっていても、実際に体験するとショックなんですよね。

 『泣くな、どうせまた生えてくるんだから』と自分に言い聞かせ、自ら髪の毛をむしり取りました。中途半端に髪が残るより、スッキリするかと思って。治療前にいろいろなウィッグを購入していたので、いまはその日の気分でウィッグを替え、楽しんでいます」

 治療に専念するため、半年間は休養するつもりだったが、3回目の抗がん剤治療の副作用が落ち着くと、仕事に復帰。

「主治医に『仕事をしたほうが気分転換になるし、元気になるかもしれないよ』と言われ、仕事を再開しました。ただし、これまでと同じようにはさすがに歌えないので、誰かとジョイントコンサートをするなど、1人の持ち時間の短いステージに立っています。ラジオのレギュラー番組は、自宅からズームで参加しています」

 仕事を再開してから食欲も出てきたという石原さん。休養中は常に病気のことが頭から離れなかったが、ほかに考えるべきことができたことで、気持ちもラクになった。

「あとしばらくは仕事をセーブする期間が続くので、その間に“作り置きコーディネーター”と“賞状書士”の資格を取ろうと思っています。もともと料理をするのが好きで、作り置き料理の上手な作り方を知りたかったんです。

 賞状書士は、賞状や宛名を毛筆で美しく書く専門職。私が主宰する詩吟教室で、生徒さんに昇段試験の賞状を渡しているのですが、手書きのほうが喜んでもらえるかと思い、挑戦しています」