講習会を重ね、これまで54人の卒業生を送り出してきた。しかし実際にブレストアートメイクを主軸に活動していくのは難しい。海外では乳がん患者の50%近くが乳房の再建を行う国もあるが、日本は乳房再建自体が約12%と少なく、その先のアートメイクまで進む患者はさらに少数派だ。

SNSではアダルトと認識され……

講習を受ければすぐに施術ができると思っている人もいるけれど、まったく違います。実際に施術ができるようになるまで何年もかかる人もいれば、できなくてやめていく人もいるのが実情です

子育てが一段落した30歳から看護師の道へ進んだ 写真提供/岩元淑子さん
子育てが一段落した30歳から看護師の道へ進んだ 写真提供/岩元淑子さん
【写真】SNSではアダルト警告で「ハードルしかない」ブレストアートメイク

 講習で技術を身につけたとしても、自ら医療機関と提携し、施術の場を設ける必要がある。そこで壁になるのがブレストアートメイクの認知で、患者はもちろん、医療従事者にもまだ知れわたっていないという。

特に乳腺の先生はあまり知らない印象があって。知ってもらうために、私たちに何ができるのだろうと考えているんですけど……

 デリケートな部位だけに、啓発もなかなか困難だ。SNSで広めようとしても、アダルトと認識され、規制がかかることもある。

もうハードルしかありません。地道にやっていくしかないのでしょうね

 と岩元さん。目指す場所はまだまだ遠い、と課題を口にする。

「日本各地にブレストアートメイクを行える医療機関ができるのが理想。それにはいい形で伝えていかなければいけない。乳がんの方だけでなく、みんなが知ってくれたらと思っていて。

 実際に乳がんになると、病気も受け止めなければいけないし、治療法も決めなければいけない。そこで初めて知るのではなく、こういう施術があると知っていたら、選択のあり方も変わってくる。知らなかった、知っておけばよかったとならないように、当たり前にみなさんに知ってもらえるようになればいいなと思っています

取材・文/小野寺悦子

いわもと・よしこ 看護師。乳がんにより失った胸の乳輪・乳頭の再建を行うブレストアートメイク活動に精力的に取り組む。看護師を対象としたブレストアートメイク専門のスクールを運営している。