織田哲郎は人生のフィクサー

 そんな相川の最大の理解者であり、批評家でもあるのが3人の子どもたちだ。

「新曲はデモの段階で子どもたちに聴かせます。彼らは一番シビアな目を持っていて、『覚えにくい』とか『何かの曲に似てる』とか率直に言ってくれます。若い人のフィルターが頼りになるんです。3人がいいと言った曲は、やはり覚えやすくて可能性があると感じます。先日はback numberのライブにみんなで行って、感動しました。自分一人では出会えなかった今の音楽も一緒に楽しみ、それも刺激になっています」

 長男は就職し、次男RIOはプロドラマーとして活動、長女は中学生。努力をし続ける母を支えつつ、それぞれの道を歩んでいる。

「音楽業界や芸能界の厳しさはわかっていますが、反対はしません。私自身、とにかく『デビューしたい』というエネルギーの強さでオーディションを受け、織田さんという運命の出会いを手繰り寄せました。最後は本人の運と縁。どれだけ強く願い、向かっていくか。18歳を過ぎたら、あとは自分で頑張ってほしいと見守っています」

 30周年のハイライトとなる武道館公演は、「運命の人」である織田哲郎と共演する。

「織田さんは、最初は父親や兄のような存在で、師匠でありプロデューサーでした。でも今は、それを超えて私の人生の『フィクサー』的な存在です。まさに人生のキーマンですね。私たちは人としての相性がすごくいいと思うので、30年以上も一緒にいられるのだと思います」

 今回の武道館公演には特別な思いが込められている。

「28年前、初めて武道館に立ったとき、織田さんは舞台裏で泣いて喜んでくれました。ご自身がソロとして武道館に立ったことがなく、プロデュースした私が立てたことが自分のことのようにうれしかったそうです。今回はその織田さんと一緒にツアーを回り、武道館に挑みます。往年の名曲はもちろん、アップデートされた現在の相川七瀬をお見せしたいです」

 30周年の次の10年に向けての展望もすでにある。

「海外展開を積極的に考えていきたいです。ブラジルや台湾での公演では、昔のアルバムを大切に持っていてくれるファンが世界中にいることに驚きました。また、単に歌いに行くだけでなく、研究者としての知見も生かしたいです。昨年、ブラジルのジャパン・ハウスで基調講演を行いましたが、音楽と学問を結びつけた文化交流に自分を投入することが、次の10年のビジョンでもあります」

 最後に、相川らしい力強い言葉でインタビューを締めくくってくれた。

「私はいつも無知で、バーンと飛び込んでから『どうしよう!』と埋めていく人生です。賢くなりすぎると、考えすぎて大胆さを失ってしまう。無知だったからこそ、切り開けた道があります。これからも、大胆さを失わない程度の賢さを持ちながら、自分らしく進んでいきたいですね」

『Rock'N' Roll Journey -30th Anniversary Best-』 (アルバム3枚組+Blu-ray Disc 税込み9900円)

相川七瀬『Rock’N’RollJourney-30thAnniversaryBest-』(アルバム3枚組+Blu-rayDisc 税込み9900円)
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【写真】『夢見る少女じゃいられない』ジャケットの相川七瀬が美しすぎる

『夢見る少女じゃいられない』をはじめとする一連のヒットナンバーから、収録希望が多かった仮面ライダー主題歌『Round ZERO〜BRADE BRABE〜』『Circle of Life』も収録。Blu-ray盤には、デビュー30周年記念日(2025.11.8)に開催されたライブの模様を収録。

あいかわ・ななせ 1975年生まれ、大阪府出身。'90年、ソニーミュージック主催のオーディションに出場し、シンガー・ソングライターの織田哲郎と出会い、'95年11月、シングル『夢見る少女じゃいられない』でデビュー。以降、ヒット曲を連発し、'96年、アルバム『Red』が売り上げ270万枚を超える。'26年11月2日には、デビュー30周年のファイナルを飾る日本武道館公演を開催。現在は音楽活動と並行して、國學院大學大学院で「祭り」の研究も行っている。

取材・文/紀和 静