大学で学びながら女優としての人生に
改めて高校卒業認定資格獲得を目指し、勉強に励んだ。試験は半年に1回実施され、退団の翌週にチャレンジしたが、パスとはならず。半年後に再チャレンジし、無事に高校卒業認定資格を得た。さらに、放送大学に入学。心理と教育を専攻し、教養学部教養学科を卒業している。
宝塚退団後の初舞台は、'07年のミュージカル『DAMN YANKEES~くたばれ!ヤンキース』。“女優”として第二の人生が始まった。しかし当初は女優としての未来は思い描いていなかったという。
「男役が好きすぎて、自分がいわゆる女優さんになるというイメージがまったくできなくて。周りに男役をまっとうされている方が多かったというのもあるかもしれません。実際に、私の周りでは、男役で燃え尽きてほしいという雰囲気がありました。だから私も、そうだよね、と思っていたんです」
湖月に託されたのはヒロインのローラ役で、オファーと同時に映像資料を渡された。ボブ・フォッシーの振り付けで、グウェン・ヴァードンがローラを演じていた。
「映像を見たとき、身体中の細胞が“うわっ”て上がってくる感じがしたんです。気持ちが動いたとかじゃなくて、やりたい、やろうよって、細胞が押し上げてくる感じ。初めての経験でした。本当は宝塚で燃え尽きる予定で実家に帰るつもりで、準備もしてました。でもこの役を演じたい。両親に電話をしたら、“そんなことを言い出すんじゃないかって2人で話してたところ”って言われましたね」
気になるのが、ファンの反応である。最後のファンの集いとなるお茶会で、これからも舞台に立ち続けたい、そうファンに告げた。
「“えー、わたるさんが女優!?”なんて、引かれるかなと思って、すごく怖かったんですけど……」
ファンの間から、大きな拍手と歓声が上がった。想像もしていない反応だった。
「いいの? 宝塚じゃなくても、みんな見に来たいと思ってくれるの?って。すごく勇気をもらいました」
『くたばれ!ヤンキース』で湖月演じるローラは、キュートでセクシーな魔女という役どころ。しかし18年間、男役として磨きをかけ、立ち居振る舞いひとつにしても“男らしさ”が染みついてしまっている。女性として、歩き方からのスタートだ。
「それまでは肩で風切るような歩き方をしていたので、まず普通に女性として歩くのが難しい。歩幅もそうだし、男性にリードされるということができないんです。だから、なかなか踊らせてもらえなかったですね。太いチューブで太ももを縛って、ひたすら歩く練習ばかりしてました」
特訓を重ね、舞台の日を迎えた。ようやく女性らしさを身につけた、はずが─。
「舞台での通し稽古のとき、スポットライトが当たった瞬間、パーンと男役になっちゃって。演出家の方に“湖月さん、男になってます!”って言われて、ハッとしました。スポットが当たった瞬間、ついスイッチが入っちゃったんですよね(笑)」
退団2年後に出演した『カラミティ・ジェーン』では、ヒロインのジェーン役で主演。勝気なガンマンが、結婚、出産、離婚、子どもとの不和と、不器用に生きる、1人の女性の波瀾万丈の人生を演じた。
「私自身はジェーンのような経験はしていない。最初はできるかすごく不安でした。でも同じ女性だからか、すごく気持ちがリンクしていったんです。男役って自分でどこか役を俯瞰して、想像しながら演じていたけれど、女性役は役との距離が近い。だから、これからもっと楽しくなるだろうなって、そのとき思えて」
'15年にはブロードウェイ版の『CHICAGO』に出演。オーディションに挑み、ヴェルマ・ケリー役をつかんだ。ブロードウェイキャストと共に全編英語で演じている。
「毎日8時間特訓しても英語が身につかない。翻訳機に向かって英語を発音して、ちゃんと翻訳できればよし。でもなかなか翻訳されなくて。トンネルの先が見えない感じでした」
大役を務め上げた開放感は大きく、こんな後日談も。
「終わってホッとしたせいか、公演後5キロ太ってしまったんです。5キロとなると落とすのは大変。せいぜい2、3キロでとどめないと。反省しました(笑)」



















