友人が立ち上げた就労継続支援B型事業所で働き、治療後の体力も徐々に回復。しかし、がん治療から3年ほどたった昨年5月ごろ、左奥の歯茎が腫れ上がり、仕事を休まざるを得ないほどの強い痛みが現れる。

薬物依存症予防の講演活動も

通院していた歯科医院で抗生剤をもらいました。先生には飲み切るころには腫れも引くだろうと言われましたが、一向に治らず、2か月以上も飲み続けました。それでも痛みは治まらない。まさか口腔がんでは……という不安が頭をよぎりました

露出していた骨を手術で摘出。「痛みと炎症で食事も会話も困難。がん治療の副作用よりも後遺症に苦しめられました。今はおいしく食べられる喜びを噛みしめています」 写真/杉田あきひろさん
露出していた骨を手術で摘出。「痛みと炎症で食事も会話も困難。がん治療の副作用よりも後遺症に苦しめられました。今はおいしく食べられる喜びを噛みしめています」 写真/杉田あきひろさん
【写真】露出していた骨を手術で摘出した直後の杉田さん

 秋ごろにようやくがん専門医に診てもらうと、中咽頭がんの放射線治療の影響で、顎の骨が砕けてしまう「放射線性顎骨壊死」のステージ2と診断される。

晩期障害といわれる後遺症が、治療から3年もたって起こるなんてショックでした。顎の骨が腐って、砕けた細かい骨が歯茎から飛び出してくるんです。それが奥歯を圧迫して、強い痛みと炎症を引き起こしていました。僕の場合はステージ2でしたが、3になると顎の下の皮膚に穴が開くなどする深刻な後遺症です

 骨を取り除く手術を受けることになったが、すぐに予約は取れず、半年以上先に。その間、痛みに耐えながら鎮痛剤を飲んでやり過ごしていたあるとき、今度は心臓の病に襲われる。

「昨年末、健康診断で心不全の疑いを指摘されました。でも大きな歌のイベントを控えていて、それが終わってから受診しようと、先延ばしにしてしまったんです。イベントが終わった翌々日、猛烈な息苦しさで早朝にタクシーを呼び病院へ行くと、心筋梗塞と診断され、即入院。カテーテル手術を受け、命をつないでもらいました

 過去に覚醒剤の使用で逮捕され、その後、依存症回復プログラムを受けた杉田さんは、依存症予防教育アドバイザーの資格を取得。薬物依存症予防の講演活動も行っている。当時も顎と奥歯の痛みに耐えながら講演の仕事をこなしていた。

心筋梗塞で入院したせいか、症状が悪化してしまって。口の中で顎の骨が飛び出してきて、舌の奥が切れてしまうんです。講演中、しゃべるたびに口の中が血の味がして……。顎が大きく開けられず、痛みで食事もできない。鎮痛剤を飲みながら、うどんや雑炊を流し込んでいました

 半年以上も抗生剤や鎮痛剤を飲み続け、やっと手術できたのが今年の3月。

歯茎がきれいに再生して、今は仮歯の状態。何を食べても『こんなにおいしいの?』と思うほどに回復しました。口腔内への放射線治療を受けた方で、もし数年後に口の中の痛みを感じたら、できるだけ早く病院で検査を受けてください。あんな苦しみを誰にも味わってほしくないですね

 もともと、歯医者が苦手で、以前の覚醒剤使用の影響もあり、口腔状態があまりよくなかった杉田さん。加えて4年前のがん闘病時、副作用などの予防のために必要な事前の歯科治療を受けていなかったことも一因ではと考えているそう。