大切なのは「人の心」

 新旧のファンが共に心地よく楽しめるように。時には、マナーを守れないファンに「あなたは出禁」と言い渡すこともあったという。

「純烈はファンのみんなのものやから。レコ大でトロフィーをもらったときも、健康センターの大広間で『みんなで回して』って。受け取ったのは僕らやけど、みんなで取ったものなんです」

 そのイズムは今、純烈の弟分グループとして活動する4人組「モナキ」にも受け継がれ、酒井は自らステージに立つ一方で、そのプロデューサーも務めている。今年4月にリリースした『ほんまやで☆なんでやねん☆しらんけど』は、TikTokで話題となるや、SNSでの再生回数は17億回を超えた。新人としては、異例ともいえる快進撃を見せている。この背景に酒井の手腕があることは想像に難くない。

「純烈の弟分をつくろうと自分から考えたのではなく、純烈が忙しくなったことで、今まで訪れていた健康センターなどに行けなくなった。その縁を大切にしたいということで、『セカンドチャンスオーディション』を開催し、弟分グループをつくろうと。いわば、頼まれごとなんです」

 酒井は、モナキを純烈の足跡を単になぞるだけのグループにするつもりはないと断言する。

「同じことをしたら、どうしても純烈と比較されてしまう。彼らは彼らで輝ける場所がある」

 モナキの躍進は、TikTokをはじめとしたデジタル的なアプローチと、純烈が行ってきた“ドサ回り”をかけ合わせた相乗効果によるものだと見る向きもある。だが、「大事なことが見落とされている」と酒井は言う。

「キャンペーンを組む会場へ行くと、地方の放送局や媒体に出演することも多い。僕らはこれを“挨拶回り”だと思っています。ただ回って出演するのではなく、関係値を高めることが大切なんです。僕らが売れ始めたころ、いろいろな人から『あのときは何もなかったのにねぇ』なんて喜んでもらえた。無名のときから挨拶回りをしっかりやれば、売れていくステップに応じて、皆さんがいろいろ気にかけてくれる」

 裏を返せば、何者でもないときに会うからこそ意味があると酒井は続ける。

「今の時代って、すぐに成果や数字に結びつけたがる。だからうまくいかない人が多い。大切なのは基本の挨拶回り。もっと言えば、人の心ですよ。それをモナキの4人には、伝え続けています」

 前出の山田邦子は言う。

「酒井は、収入がカツカツのときも子だくさんのお父さんとして頑張っていた。子育てが一段落し、今度はモナキを育て始めた。酒井は育て好きだと思う(笑)」

 人を育てることもまた、酒井にとって「求められたこと」に応える営みなのだ。