未完のままでいい。ゴールはない

「人生において、完成形を見いだして死にたいと思ってる人が多いと思うんですけど、僕は未完のまま死んで全然オッケーなんです」

 白川裕二郎が、'27年3月31日をもって純烈を卒業することが発表された。新メンバーを募集するオーディションも控える中、純烈の未来について尋ねると、酒井はそう答えた。

「白川は昨年お母さんを亡くした。彼の純烈を続ける理由がお母さんであったことは、僕たちも知っていた。彼の夢の実現とお母さんの寿命が、常に“対”になっていたから、白川の卒業は来るべき時が来たと。だから、悲観していないし、これからどんな純烈になっていくのか楽しみでもある」

 純烈にゴールは設けていないという。ファンがいる限り、純烈も走り続けると笑う。

「CDデビューして16年ですから、ファンの中には亡くなっている方も少なくない。その方たちのラストメッセージが、『やめるな、リーダー。上に行っても見てるからね』なんです。僕ね、冗談抜きで天国チームのおかげちゃうかなと思っているんです。こんなに早くにモナキがブレイクしたのも、上へ旅立った皆さんの力があったからやないかなって」

 その人たちの顔を、酒井は今でもすぐに思い浮かべられるという。それほどまでに、大広間で過ごした時間は濃かった。

「僕が今、目指している純烈は、白川が卒業したら、もっと細かいところまで行くこと。光の当たる場所は後輩たちに任せて、老人ホームも含め、生きているおじいちゃん、おばあちゃんたちに『私たち、純烈を生で見たことあるよ』って言ってもらえるような場所へ行きたい。求め続けられる限り、勝ち逃げなんてしません(笑)」

 酒井を動かしているのは、いつも人の心だ。たびたび純烈は“昭和的”と言われるが、酒井は、時代が失ったもの、軽んじられつつあるものに光を当て、「これってやっぱりええやん」と新たな価値として差し出してきた。求められる場所へ向かい、そこにいる誰かを喜ばせたい。その繰り返しが、これから先の酒井一圭を、またつくっていく。

あづま・ひろたか フリーライター。大学在学中に東京NSC5期生として芸人活動を開始。約2年間の芸人活動ののち大学を中退し、いくつかの編集プロダクション勤務を経て独立。ジャンルを限定せず幅広い媒体で執筆中。著書に、『お金のミライは僕たちが決める』『週末バックパッカー』(共に星海社新書)がある。

取材・文/我妻弘崇 撮影/伊藤和幸