息子にはどんなことも経験させる
興味の赴くままに好きなことを楽しむ姿勢は、「ちっち」の愛称で親しまれる19歳の長男・東儀典親さんにも影響を与えた。
彼を育てる中で、守り通してきたことがある。それはどんな大曲を手がけていようと、彼が「パパ、聞いて!」と来た際には必ず手を休め、真剣に耳を傾けることだ。
「ここで中断しても、また必ず俺の才能は降りてくる!って信じてますから(笑)。それよりも息子のその瞬間の目の輝きとか、聞いてほしい、という気持ちのほうが僕にとって大切なんです。
また、息子にはどんなことも経験させました。何かをしたいと言ったときに否定したことがない。そして理不尽な目に遭ったり嫌な思いをしたら、それを次に生かすにはどうしたらいいかを一緒に考えるんです。
その結果、外で何があっても親がちゃんと受け止めてくれると認識したせいで『今日、こんな嫌なことあったよ!』って、目をキラキラさせて学校から帰ってくるようになっていましたね」
そんな典親さんは父と同様、ロックから雅楽まで自在にこなし、秋から始まる30周年コンサートでも共演するという。『古事記』や『日本書紀』を愛読し、神社・仏閣の研究も怠らない典親さんから「父上、今度のツアーでは笙をこんなふうに使ってみるのも面白いですね」と提案されると、目を細める。
SNSでは親子でのセッションも披露しているが、雅楽の継承について尋ねると、
「『今から篳篥のお稽古を始めます』とか『雅楽とはこういうものだ』とか、改まって教えたことはないんですよ。雅楽の継承で何より大切なのは技術より、『精神性』。雅楽の存在価値や日本人の感性、雅楽の宇宙観などの哲学的なものを知ろうという精神を息子につなぐことができたら、雅楽は安泰だと信じています」



















