受け継がれていく意思

 東儀家では古典についての会話をするのは日常茶飯時だ。

「僕がこうして、音楽にワクワクしながら面白がっている姿を自然と見ているから、息子も同じように楽しむようになった。でも、彼がスポーツ選手や陶芸家になったとしても、僕が死んだ後の十代先に、音楽に向いている子が生まれて、こういう精神性で演奏する雅楽師が出たら、それでいい。

 だから継承を見届けなくてはとは思っていないんです。1000年以上続く雅楽の歴史の中で、僕はほんの点に過ぎないから、この一瞬でジタバタするものじゃないだろうと、どっしり構えています」

「音楽は生まれた瞬間に消えていくからこそ、そのときの全力を出し切って後悔しない演奏をする」という姿勢は、デビューから変わらない。8月に発売した30周年記念のアルバム『THE TOGISM』は、発表当時の曲をリメイクしたり、今の東儀さんの思いをモチーフにしたものなど、すべてのファンに楽しんでもらえる内容だという。

「東儀秀樹30thアニバーサリーツアー〜悠久と革新のTOGISM〜」10月11日 福岡・FFGホール/12月12日 京都コンサートホール 大ホール/12月27日 石川・金沢市文化ホール/2027年2月23日 宮城・日立システムズホール仙台 シアターホール/3月6日 愛知・日本特殊陶業市民会館 フォレストホール/5月14日 東京国際フォーラム ホールC/5月23日 大阪・ザ・シンフォニーホール 問い合わせ:株式会社UTACA info@utaca.jp
「東儀秀樹30thアニバーサリーツアー〜悠久と革新のTOGISM〜」10月11日 福岡・FFGホール/12月12日 京都コンサートホール 大ホール/12月27日 石川・金沢市文化ホール/2027年2月23日 宮城・日立システムズホール仙台 シアターホール/3月6日 愛知・日本特殊陶業市民会館 フォレストホール/5月14日 東京国際フォーラム ホールC/5月23日 大阪・ザ・シンフォニーホール 問い合わせ:株式会社UTACA info@utaca.jp
【写真】すでにミュージシャンとして活動している息子の典親さん

「ぜひ生の演奏を味わってほしい。先入観をすべて捨てて、まずは篳篥や笙の音に身を委ねてみてください。スタンディングに手拍子、なんでもOK! 必ず楽しい思いをさせますよ!」

 淡々と、俯瞰で自身の立ち位置や音楽を語る一方で、洋の東西どころかジャンルも問わず、宮内庁すら軽々と飛び出し、好きなものを楽しみ尽くす東儀秀樹さん。その生き方こそが「TOGISM」の神髄なのだろう─。

取材・文/合田みれい 

とうぎ・ひでき
1959年生まれ、東京都出身。奈良時代から1300年間、雅楽を世襲してきた楽家・東儀家に生まれる。幼少期を海外で過ごし、ロック、クラシックなど、多彩な音楽を吸収する。高校卒業後、宮内庁楽部に入り、篳篥を主に担当、宮中儀式や皇居、海外での雅楽演奏に参加。宮内庁を退庁後、'96年デビューアルバム『東儀秀樹』で脚光を浴び、日本ゴールドディスク大賞など受賞歴多数。