大人の「オモレー友達」に

 風間さんには、当事者であると同時に、問題を抱えた人を支える側の顔がある。

 2018年、発達障害や精神疾患がある人、非行少年、ひきこもっている人、性的マイノリティーの人たちの居場所となっていた「ごちゃまぜCafeメム」(東京・江戸川区)がオープンした。その後、店主が体調を崩し、経営の危機に。翌年、風間さんがオーナーを引き継いだ(現在は閉店)。

「さまざまな当事者が立場を超えて一緒にいられる場所でした。人間には家庭と学校、職場だけではない場所が必要です」

 その言葉には、風間さん自身の人生が重なる。家庭に居場所がなかった子ども時代、風間さんを受け入れたのはストリートだった。社会から見れば「非行」の場所でも、本人にとっては初めて仲間ができた場所だった。

 2020年8月には、20代という若さで保護司になった。非行少年や犯罪をした人の更生を支える立場だが、風間さんが目指すのは、“正しい道”を教える大人ではない。

「自分は非行を経験したし、タトゥーも彫っている。ゲームやストリートカルチャーにも親しんできました。だからこそ、少年たちと共有できる言葉があると思っています。非行少年に対して、『こうしなさい』と正しい道を示すのではなくて、大人の『オモレー友達』でありたいと思っています」

 幼いころ、押し入れの中で父から「ママを怒らせないように立ち回れ」と言われ、施設でも「正しい」振る舞いを求められた。自分の気持ちより、大人の考える正解が優先されてきた。

 だから風間さんは、支援する側になった今も、相手の人生を自分の「正しさ」で塗り替えないことを大切にしている。対話では、相手を責めるのではなく自分の気持ちを伝える「Iメッセージ」を使い、失敗した少年をすぐに見捨てず、必要な距離を保ちながら見守る。

「親側に言うことは何もない」と風間さん 撮影/矢島泰輔
「親側に言うことは何もない」と風間さん 撮影/矢島泰輔
【写真】虐待、薬物依存、自傷…波乱万丈を乗り越えてきた風間さん

 依存症の問題に取り組むASKのアドバイザーにもなり、現在はインターネットやゲーム、ギャンブルの依存にも関わっている。

「『支援してあげる』のではなく、当事者と一緒に『何をするか』を考えるのです。そして、本人が何を求めているのかを聞きます。しかし、実際の支援現場では、本人のニーズより『最善の利益』が優先されることがあります。子ども、若者や精神保健の領域では、本人が『未熟』『判断能力が低い』と見なされやすく、支援者が『正しい道』に導くという構図が生まれてしまいます。自分は、その構図によって傷ついてきました。同じことを繰り返したくないです」

 2021年3月ごろ、ASKの機関誌『季刊Be!』に文章を寄せたことも転機となった。多くの人に読まれ、反応が寄せられた。その後も寄稿し、現在は編集部員として活動している。

「自分の人生を語ることは、自分の経験を現在の社会の問題と結びつけ直す作業になりました」

 風間さんの人生には、もう一つ大きな転換点がある。22歳のとき、飲み歩いているうちに出会ったパートナーとの間に子どもを授かったことだ。

「『自分の親と同じように子どもを傷つけたくない』との思いもあったので、薬物や酒、タバコをやめる理由にもなりました。ただ、タバコをやめてから食べる量が増えましたけど」

 結婚してからは、きちんと料理をするようにもなった。どこかで食べた味を記憶し、調味料を一つずつ味わい、何を足せばその味になるのかを逆算して作ったという。

 ただ、「母親になったから人生が変わった」という単純な美談にすることには、風間さん自身が慎重だ。子どもが生まれたからといって、それまでの傷が消えたわけではない。誰か一人の存在によって、過去のすべてが救済されるわけでもない。

 変わったのは、人生の中に子どもや支援者の仲間といった存在が増えていったことだった。

「不妊治療に悩む友人やセクシュアルマイノリティーのカップルもいます。子どもを育てる中で、自分が子どもを持てたことそのものの『特権性』と考えるようにもなりました。自分が得ているものを当然とは考えなくなりました」