「愛される作品」の秘密が知りたくて

 阿部暁子は2008年に集英社が主催する「第17回ロマン大賞」を受賞しデビュー。小説を書き始めたきっかけは、地元・岩手の歴史にふれたことだった。

「高校受験で日本史の勉強をしていたら、源義経が平泉に奥州藤原氏を頼って逃げてきて、そこに源頼朝が弟を追って攻めてきてというのを読んで“え、うちの地元でそんな面白いことが!”って(笑)。それから高橋克彦さんの『炎立つ』などを読むうちに、むくむくと情熱の種みたいなものが生まれて、自分でも書くようになりました」

 高校1年から文芸コンクールなどへ投稿を重ね、大学を卒業した年に最初の単行本が出版される。しかし3作目まではほとんど売れず「いきなり壁にぶつかりました。ずいぶんと長いこともがいていました」と振り返る。

 苦悩していた時期に『ストロボ・エッジ』『アオハライド』など、人気漫画のノベライズも手がけている。

「オリジナルの小説が本当に書けなくなっていたんです。そんな自分を心配して担当さんが声をかけてくださって、なんとか書くことから離れずにいられたし、すごく勉強になりました。

 愛される作品っていうのは、どんなところに魅力があるのか。さらに読む人を楽しませるために作者はどういう努力を重ねているのか。分析し考察しながら書いていたので、まさしく鍛錬という感じでした」

 韓国ドラマを見まくった時期もあったという。

「(執筆していた)コバルト文庫は恋愛が重要な要素なのですが、恋愛を書くのがまったく下手だったので、みんながときめく秘密を知りたくて、韓国ドラマやハーレクイン・シリーズを一生懸命(笑)。特に『善徳女王』という歴史大作にはハマりましたね。執筆の参考というよりも、ただただドラマに惚れ抜いて(笑)。

 そのうちに気がついたら恋愛に対する苦手意識もなくなっていて。人を愛するってすごく素敵なことだよなっていう柔らかい気持ちに変化していました」