目次
Page 1
ー 奥田瑛二との摩訶不思議な縁
Page 2
ー 弱冠27歳で料亭を始めた母
Page 3
ー 母親からの“監視”を一身に受けた幼少期
Page 4
ー 名字が違う父との思い出と後悔
Page 5
ー 母親の眼鏡にかなった奥田瑛二だったが……
Page 6
ー 虫歯がきっかけで結婚!? 摩訶不思議な縁
Page 7
ー 仕事ですれ違う2人の間を取りもった出産
Page 8
ー 「うつ」や「燃え尽き症候群」を乗り越え

 梅雨の終わりを告げる雷が時折、六本木の東の空に轟く。もうすぐ大好きな夏がやってくる。

 友人のバースデー・パーティーが始まってしばらくたったころ、集まっていた仲間の目が、遅れてやってきた2人の男性に釘づけになった。

 人目を引かずにはいられないほどの美しい2人の男性の動きを安藤和津は、ずっと目で追っていた。特に紺地に白のストライプのトレーナーにジーンズ姿と、このパーティーにあまりにも似つかわしくない服装の男性に、つい目がいってしまう。

奥田瑛二との摩訶不思議な縁

 ドナ・サマーの曲に乗って踊っているフロアの男女をぼんやり眺めながら、1人、ウオッカトニックを飲んでいるちょっと陰のある男性。それが当時28歳になったばかりの奥田瑛二だった。

 仕事を尋ねると、

「僕は文学座の俳優です」

 そうは言っても舞台には出ていないようで、出演している子ども番組『スポーツケンちゃん』(TBS系)と『がんばれ!レッドビッキーズ』(テレビ朝日系)の名前を挙げた。文学座の俳優が子ども番組!? この疑問は的中! 文学座は真っ赤な嘘だった。

 しかし思いがけないほど饒舌に話し続ける彼の勢いにのまれ、すっかり意気投合。2次会にも繰り出し、気がつけば帰る方向が同じ彼とタクシーに乗っていた。

 すると彼は迷わず、

「恵比寿経由で六本木まで」

 自分が先に降り、当たり前のようにタクシー料金を払わせようとする。

─なんてヤツなの!?

 和津の頭はクエスチョンだらけ。しかし傍若無人の行いはこの時だけではない。

 その後、喫茶店で待ち合わせをしても、必ず先に来て食事をし、支払いの段になると姿を消し、和津がカレーライスやスパゲティ、ピラフなどの支払いをする羽目になった。

 しかもただの一度も「ありがとう」を言わない。

 問い詰めると、いろいろな事情で下宿には戻れず、友人の家や、時には代々木公園で寝泊まりをしているという。つまりは“ホームレス”であることもわかった。

 これがお金のない生活に慣れている奥田と、お金のない生活の怖さを知らない和津の出会い。

 こんな2人がなぜ結ばれたのか。神様は時に気まぐれ。摩訶不思議な縁を結ぶ。しかし、それは決して偶然などではない。だから人生は面白いのだろう。