母親の眼鏡にかなった奥田瑛二だったが……
学習院初等科から学習院女子中・高等科を経て、上智大学へ進学。2年間のイギリス留学の経験もある和津を、モデルやタレントが出入りする六本木のディスコで、友達から紹介されたキャシー中島が振り返る。
「身に着けるもの、醸し出す雰囲気からひと目でお嬢様だってわかりました。英語が堪能で外国人のボーイフレンドとも楽しそうに話していましたね」
それがなぜ、お金のないホームレス生活を送る奥田瑛二と結ばれたのか。
2人のロマンスを語る上で、一卵性親子と呼ばれた母・昌子の存在を抜きにしては語れない。
「彼みたいなタイプは結婚相手の範疇におよそ入るわけもないし、年下だし、どちらにしても母もそうカリカリしないだろうと、私は高をくくっていました」
ほとんどのボーイフレンドが、ど迫力の“ゴッドマザー”の前に出るとプレッシャーから自分を飾らずにはいられなくなる。ところが素朴で真っ正直で何の飾り気もない奥田は、その母の眼鏡にかない、奇跡的にも家への出入りを許された。すると2日とあけずに、空っぽの胃袋を満たすためにやってくるようになった。
当時、友人が留守のときは代々木公園で寝起きする日々を送っていた奥田。“事件”が起きたその日も寝床に困っていた。しかも急に降り始めた雨は勢いを増すばかり。彼を追い出すわけにいかない和津は、苦肉の策を思いつく。
─自分の部屋の洋服ダンスに隠そう。
「翌朝、ジャズダンスのレッスンがあった私は、母がキッチンにいるタイミングを見計らって彼を連れ出そうとしたんです。ところが“眠いからもうちょっと寝かせて……”と言ってテコでも起きない。それが運の尽きでした」
和津が“バレませんように”と祈りながら、飛んで帰ると、奥田はマンションの入り口の階段にしょんぼりと座っていた。
「逆上した母に罵られ、引き出しの中にある、ありとあらゆるものを投げつけられ叩き出されていました」
これで2人の物語にもエンドマークが打たれるはずだった。ところが神様は気まぐれ。2人に劇的なラストシーンを用意していた。



















