虫歯がきっかけで結婚!? 摩訶不思議な縁
「洋服ダンス事件」以来、母の逆鱗に触れた奥田は出入り禁止となった。しかし安藤家でごはんが食べられない状況は、彼にとって死活問題。なんとか母の怒りを解く方法はないか。考えあぐねていた矢先、ある秘策を思いつく。
「奥田君と私は何もないことは母もわかっていたはず。あとは彼に信用回復の機会を与えるだけ。そこで思いついたのが麻雀というわけです」
50歳を過ぎて初めて覚えたこのゲームに母は夢中。そこでメンバーが1人足りない状況をつくり、母に奥田の参加を渋々承諾させた。しかし和津の秘策は思わぬ展開を招く。
「一度感情を爆発させた後は、不思議と親近感を覚えるもの。母は以前より彼を可愛がるようになり、私がお稽古で留守のときも、2人でデパートに行ったり、お茶を飲んだり愚痴をこぼす相手にもなっていました」
ところがそのころ、母が愚痴をこぼしていたのが和津の結婚問題についてだ。当時、和津には、30歳を前にして婚約寸前の相手がいた。彼はエリートで結婚相手としては申し分のない男性だったが、付き合っていくうちに、どこか感覚の合わない部分が気になり始めた。結果、彼との婚約は破棄。アメリカに逃避行した経緯がある。
以来、荒れに荒れていた和津に手を差し伸べてくれたのが、次に付き合ったボーイフレンドだった。
「彼は日本とアメリカを行き来する日系3世。結婚して日本食レストランをやらないかとプロボーズされていました。でも“愛しているか”ということになると違う気がする。そしてもうひとつ。奥田君に対する自分の気持ちにもそのころ、気がついていました。でも、あくまで2つ上の頼れるお姉さんという立場を、そのころはまだ崩したくはなかったんです」
揺れる女心。そんな中、またもや、とんでもないハプニングが起きる。
「数日前から歯が痛いと言っていた奥田君ですが、母から誘われた麻雀は断れず、痛み止めを噛み砕き、氷のうを頬に当てながら、次々と高い手で上がっていました。でも、ついに痛みが限界に達したのか、四暗刻ツモの牌を持ったまま崩れるように倒れてしまいました」
高熱から痙攣を引き起こす奥田を連れ、翌朝、慌てて歯科医院に駆け込んだ。
「危ないところでした。あと1時間遅れていたら……」
歯の神経が侵され、死にかけた奥田をこのまま放り出すわけにもいかない。
人情に厚い母は即座に一部屋を空けると、布団を敷いて寝かせた。そして和津の八面六臂の大活躍が始まる。
「絶縁状態の彼の家族に連絡を入れ、病状を報告。そして着替えの入ったスポーツバッグを、寝泊まりしていた友人の家に取りに走りました。母と2人で抱きかかえ、流動食の重湯を食べさせました。すると奥田君は両手を合わせ、涙をポロポロこぼしながら“すみません、すみません”と泣く。その姿が今でも目に焼きついて離れません」
ついに摩訶不思議な縁で結婚した和津と奥田。しかし神様はそんな2人にさらなる試練を与える。



















