個人番号カードに格納されるICチップには、自治体が独自の機能を入れていいことになっている。
例えば、千葉県千葉市は「図書館カードや公立病院の診察券などの機能をもたせ、市民からマイナンバーがあってよかったと言われるものを作ります」(総務局情報経営部業務改革推進課)と、システム設計に前向きだ。学生証や社員証の機能をもたせようとする自治体もある。
また、IT総合戦略本部は、戸籍事務や介護情報などへのひも付けも検討。今後、カードが多機能化すれば、誰もが当たり前に所有するかもしれない。
だが、白石さんが「恐ろしい」と主張するのが、改正法の付帯決議で「生体認証の導入」が決まったことだ。具体的には、指紋や虹彩、顔情報をカードに入れる。それを、例えば東京オリンピックでの入場時に照合して「テロリストではない」ことを確認する。
「ロードマップ案を見ると、マイナンバーの目的にテロ対策が加わったことがわかります。さらに、生体情報という究極の個人情報を国が管理する。これは人権侵害です」(白石さん)
この杞憂は白石さんだけのものではない。8月28日、参議院議員会館で開催された『共通番号全国交流討論集会』で登壇した水永誠二弁護士は、「マイナンバーで社会保障の推進はウソ。高齢者への詐欺は必ず起こるし、私たちは個人情報を国に利活用され、監視されるだけ」と訴えた。
人格権に基づき、マイナンバーの利用差し止めを求める裁判を全国7か所で起こす予定があると明らかにしている。マイナンバーは必要なのか? 個人番号カードの所有は任意だ。内閣官房に問い合わせても「カードがなくても役所での手続きは従来どおりにできる」のだ。では誰が得をするのか?
マイナンバーの‘14年度・‘15年度の政府予算は2000億円超。マイナンバー運用のため、自治体は国と常時オンライン接続するが、システム構築の予算は、その2000億円超からあてがわれる。
一方、同じようにシステム構築しなければならない法人は全額を自前で整備しなければならない。組織の規模にもよるが、百万円単位や千万円単位の費用がIT業者の言い値になるのは間違いない。
すなわち、ちょっとしたITバブルが起こる。さらに生体情報や健康保険証情報などが加われば、ビジネス利用に拍車がかかる。これもアベノミクスの成果とされるのだろうか。
白石さんは訴える。
「マイナンバーは、不要かつ危険な制度です。国や政府、自分の自治体に意見を上げて世論が盛り上がれば、運用の見直しにもつながります。国民的な運動にしていきたい」