「もうこれ以上、娘さんを傷つけることはできません」

20150630 ijime (1)
中1夏のテニス部の練習で
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「意味がわかりません。傷つけてもいいです。助けてください」

 母親は叫んだ。しかし、祖母(母親の実母)が背中をトントンと叩いた。そこで、A子さんが亡くなったことが理解できた。後から聞いた話だが、1度は心臓が動いた。心臓マッサージをしたが、再び動くことはなかった。

 A子さんが亡くなった翌日の夜、学校で緊急保護者会が開かれた。会を欠席した保護者の1人が自宅までやって来て、こんなことを言った。

「きっと蝶々かトンボを追いかけて落ちたと思うねん。そう思ってあげて。自らこんなこと(自殺)をする子やない」

 不審に思った。直後に開かれたテニス部の保護者会で、その保護者は「今、XX(A子さんの名字)さんのところへ行ってきました。A子ちゃんは、蝶々かトンボを追いかけていたと言ってました」と発言したという。なぜ、事故と思わせるようなことを言うのか……。のちに公表された報告書で、この保護者の娘がいじめの加害者と認定されていたのだ。

 母親は学校長に会いに行った。生徒へのアンケート調査をお願いしたが拒否された。家庭内の噂が流れていたことが影響したのだろうか。

 "母親が殴っていた""飛び降りたマンションの下から父親が見ていた"─そんな根も葉もない噂が出回っていた。

「大津市のいじめ自殺事件でも、いろんな噂が流れていましたから。結局、事実ではありませんでしたが」

 ようやくアンケートが実施されたのは5月17日。結果の開示にも時間がかかり、母親らがマスコミに公表できるようになったのは回収から3か月後だった。