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 『5時に夢中!』(東京MXテレビ)など、コメンテーターとしても活躍する作家の岩井志麻子さん。

 岩井さんは、わかりやすい友情ものよりも鑑賞した後に、「これって実は、女同士の友情を描いているんだよなあ」と感じる作品のほうが印象に残ると語る。

「映画でいえば、松本清張原作の『疑惑』。桃井かおり演じる前科持ちの札つき女が、夫に対する保険金殺人の容疑で逮捕されるものの、岩下志麻演じる弁護士が、状況証拠を次々と覆して無罪を勝ち取るというストーリーです」

 正反対の生き方をしてきた2人のため、まったくそりが合わない。

「面と向かって“あんたなんか大っ嫌い!”と言い合ったりする。事件が決着したあとにも、衆人の前で激しいバトルをするのですが、岩下志麻が“なにかあったら、また弁護してあげるわよ”と捨てゼリフを残し、涼しい顔で立ち去るんです。実際、2大名女優の共演ですから、迫力がすさまじい。でも、自分の生き方を貫いてきた者同士として、根底は深く認め合っているんですね。わかりやすい仲よし関係だけが友情ではないことを、後から味わわせてくれる秀作です」

 もうひとつのおススメは、名作マンガの『ちいさな恋のものがたり』。

「これって、表題どおりチッチとサリーの恋物語だと思われていますが、私は女同士の友情物語だと思うんですね。チッチの親友のトンコちゃんは、サリーへの恋に一喜一憂するチッチを、しかたがないなあと思いつつ、ずっとずっと、大人になっても応援し続けるんです。作者のみつはしちかこ先生は、メルヘン(空想物語)の名手ですから、実は、こんな女同士の友情関係に憧れていたんじゃないかな、と思います」