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 昨年5月、餓死して7年以上とみられる齋藤理玖くん(死亡推定当時5歳)の白骨遺体が自宅で発見された。殺人罪などに問われた元トラック運転手の父・齋藤幸裕被告(37)に対し、横浜地裁は22日、懲役19年の厳しい実刑判決を言い渡した。

 被告はキャバクラで知り合ったA子さんと不倫関係に陥り、徐々に自宅から足が遠のいた。理玖くんに与える食事は毎日2食から、次第に2、3日に1食、最後は1週間に1食と減った。

 暗闇の中、やせ細って衰弱していく理玖くんの姿を認識していた。それなのにA子さんとラブホテルで過ごし、ディズニーランドでデートを楽しんだ。

「被害児童に苦痛を与えたことはあまりにも残酷です。真っ暗な部屋で、怖さ、不安を与えた。その悲しみ、苦しみは、どんなものだったでしょう。空腹のあまりお腹が痛くなるし、意識も朦朧として、判断力も低下します。でも、被告を恨むことは決してなかったでしょう。親の意識が欠落した自己中心的な行動です」(検察側が同公判で)

 検察側の尋問に対し、被告が返答できないシーンが多々あった。公判当初の尋問では次のようなことがあった。

「あなたは1日だけ、理玖くんが待っているアパートに帰らなかった理由として、借金の取り立てが怖かったと言っていましたね。では、あなたは借金の取り立てから逃げることと、理玖くんに食事を与えることのどちらが大切だと考えていたんですか?」

 うつむいて黙ったまま、被告は返す言葉がなかった。同じようなことは、とりわけ10月5日の第10回公判で顕著に見られた。検察側は論理的につじつまの合わない部分を責めた。

「なぜ理玖くんが亡くなったことを誰にも言えなかったのですか?」

「……」

「なぜ遺体が発見されることが怖いんですか?」

「……」

「遺体を何年も放っておいていい理由があるんですか?」

「……」

「あなたは、お母さんの病気のせいでイヤなことは忘れようとするようになったと言っていましたが、理玖くんが亡くなったことをイヤなこととして忘れてしまったのではないですか?」

「……」

「理玖くんのことを1日たりとも忘れたことがないのなら、なんで亡くなった時期を覚えていないのですか?」

「……」

 そして、「答えられないんですか?」という質問にだけ、「……はい」と返した。

 被告はチグハグな答えも目立った。同公判では、理玖くんの死に対して、勝手に家を出て行った妻の責任をどう思うか問われると、あやふやな言い回しでこう答えた。

「少なからず責任はあると思いますが、全責任は自分にあると……」

 同様に、被告の両親や妹弟の責任については、こう述べた。

「そうですね。多少は……。もう少し気を遣って、自分のことを考えてくれればよかったかなと。そういう程度です」

〈取材・文/フリーライター山嵜信明と『週刊女性』取材班、イラスト/スヤマミヅホ〉