神戸市東灘区の側溝に身を潜め、通行中の女性のスカート内を覗こうとしたとして11月、県迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されたのは市内に住む会社員(28)。午前3時ごろから約5時間潜み続け、パンチラのチャンスを狙っていた。
実際に記者も夜明けと同時に“ベスト・オブ・側溝”に行ってみた。始発が走る時間から人通りがあり、午前7時を過ぎると制服姿の学生たちがドッと増える。
7時45分から5分間の路上通行量を調べると、総数80人中、女性は42人。側溝の上を通った女性が28人いた。わずか5分で28パンツ。豊作だろう。
側溝の蓋を開けて奥を覗き込むと、狭くて暗い。底にはうっすらと水がたまり吸い殻4本と紙くずが浮いていた。
そこまでして側溝に執着するのはなぜなのか。自宅を訪ねると、母親が取材に応じた。
「息子は前回の逮捕で自分がニュースになったのを知っているし、やったらあかんことだとわかっている。しかし、繰り返してしまうんです。幼いころから友達やきょうだいとマンションの軒下や川の通路に入って遊ぶのが好きでしたが、あの子だけは成長してもやめなかった。大人になって性的な興味と結びついてしまったかと……。本人は“俺なんかおってもみんなに迷惑かけてしまう”と苦しんでいます」
母親によると、男には軽度の学習障害があるという。
「多かったころは週に2回とか入りに行っていたのかな。 “居心地いいし落ち着く”って言うんです。普通の男性は恋人をつくったり(アダルト)ビデオを見て(性的)欲求を解消するんでしょうけど、あの子の場合はそれが、ね。溝だったのかなあって……」
男の行為は許されるものではない。
「友達との間でも“怖いね”と話題で、側溝の上を歩くのを避けるようになりました」(甲南女子大の学生)
そう言って、顔を曇らせる。だが男には優しくきょうだい思いな一面もある。母親は語る。
「電車でお年寄りには必ず席を譲り、小さい子がグズっていたらそのお母さんに手を貸しに飛んで行くような子なんです。長男で妹2人と弟の面倒見もよくて。高校の演劇部では先輩に恵まれて生き生きしていたし、1度彼女がいた時期もあったんです。アニメが好きみたい。私たちがわからない境地で苦しんでいるのかもしれないけれど、“何かあったら言いなさい”とは伝えています。優しい子なんです」
2年前の事件後、心療内科で治療を受けた。しかし、そのかいなく犯行を繰り返してしまった。なんとか側溝と訣別する手はないものか。
「今回はもっと専門的にみてくれる精神科に連れていきました。あの子、問診票に“普通になりたい”って書いていたんです……」
2年前の願いは「道になりたい」だったから、改善の兆しがあるのかもしれない。まだやり直す時間はある。