一方、ホスト側には“副業ビジネス”としてのうまみがあると言われているが、実際はどうなのか。都内で3軒ほどの物件を5000円から1万円で貸し出すCさんはこう明かす。

「自宅の空き部屋などを貸していますが、正直、儲けにはなりません。光熱費がかかるほか、清掃も自分でやる。受け入れ前のやりとり、鍵の受け渡しなど、手間もかかります」

 それでも民泊を続けるのは、宿泊料以上の“体験”が得られるからだという。

「ゲストから食事に誘われたら、基本的に行きます。すると、宿泊後のレビューに“食事を一緒にしたことが楽しかった”と書かれる。次に予約する人も、それを見て“僕にも日本のお店を教えて”と声をかけてきます。そうやって、世界じゅうに友達が増えていくことが何よりの魅力ですね」

 フィンランド人の母(50代)と息子(20代)が泊まった際は、寿司の出前をとって、息子が大好きだという日本のアニメを鑑賞。母親の就寝後は男同士で朝まで語り明かしたという。また、タイ人2人が宿泊した際は安い居酒屋、バー2軒、締めのラーメン店まで付き合ったことも。

 トラブルになったことはないのだろうか。

「2年前、民泊を始めた当初は30代のオーストラリア人におねしょをされ、それを隠すためにベッドに水をまかれていたことがあった。原因は、受け入れ前のやりとりを省いて、宿泊許可を出したこと」

 『airbnb』では通常、受け入れ前にゲストとホストが互いに自己紹介をし、メールでコミュニケーションをとる。Cさんは、この過程で“英語での会話が難しい人”や“顔写真を登録していない人”“メールを送って1日以内に返信がない人”などは受け入れないようになったという。

 以来、トラブルはなく、泊めた人数は140人以上。ホストとゲストが互いを評価する口コミのシステムで、「安心」「清潔さ」「コミュニケーション力」などの高評価を蓄積してきた。同サービスには、登録者全員が不審者やマナー違反者を見張り、報告し合いながら秩序を保ってきた経緯がある。

「事前のメールで親しくなった相手には最大限、ホスティングをしようと愛着もわく。短期間ですが、家族のような存在になることもあるんです」(Cさん)

 しかし、こうした真剣な“おもてなし”も、日本では法律違反にあたるのが現状だ。旅行業界に詳しい金子博人弁護士に問題点を尋ねた。

「民泊は、昭和23年制定の“旅館業法”に抵触します。あくまでも目安ですが、年3回以上、お金を取って人を泊めたら営業行為とみなされてしまうんです」

 では、法律違反にもかかわらず、なぜ日本で民泊がこれほど広がっているのか。

「2年前の秋、国内では1000件以上、民泊物件の登録がありましたが、実態が把握できないまま見て見ぬふりをされてきた。旅館業法は、個人間のビジネスまで想定したものではなかったため“友人や知人を泊める延長線上の行為”という見方も一部あったのではないでしょうか」(金子弁護士)