「秘書が私より66歳下なんです。だから若い人のことをいろいろと教えてくれるの。私が小説を見せるでしょ、すると“こんな言葉、私たちは使いません!”って怒られる(笑)。だから“じゃあ、何て言うの?”と聞いて書き直すの。

 SEALDsのメンバーには私も会いましたが、とてもいい子たちよ。安保関連法案のこととか、このままだと日本は滅びると思っていたけれど、デモに参加して反対意見を堂々と言う姿を見て、“もしかしたら日本は助かるかな”と感じるようになりました」

 一方で、若い世代には恋愛も結婚もしたくない草食系が増えているが……。

「それは、ちょっとおかしいわね。性欲が一番強いときなのに、恋人はいらないなんて。性欲がないというのは、つまり生きることに対して情熱がないということ。だから恋愛だけでなく、政治にも仕事にも情熱のない人になってしまう。やっぱりね、人間は情熱ですよ」

 一昨年には、圧迫骨折と胆のうがんのため、約1年間の闘病生活を送った瀬戸内さん。それでも衰えぬ創作意欲は、やはり情熱の賜物なのだろうか。

「情熱というより、私も病気なんです。酒飲みが酒をやめられないように、書くのをやめられない病気。もし身体が動かなくなっても、寝床にいながら、きっと頭の中で書き続けると思うわ」

『求愛』瀬戸内寂聴=著 /集英社
『求愛』瀬戸内寂聴=著 /集英社
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■取材後記「著者の素顔」

 取材中に好みの男性の話になり、「私ひとりを守ってくれる男より、ほかの女性からもモテて、いつもハラハラするような男性のほうがいいわ」と瀬戸内さん。

 有名人ではイ・ビョンホンがお気に入りだそう。

「雑誌の企画で彼に会わせてもらったの。腕に数珠をつけているから、仏教徒なのかと尋ねたら、“私は無宗教ですが、今日は瀬戸内先生に会うので、特別につけてきました”って言ってね。ほんと、カッコよかったわあ~(笑)」

取材・文/塚田有香 撮影/坂本利幸

〈著者プロフィール〉

せとうち・じゃくちょう 1922年、徳島県生まれ。1957年、「女子大生・曲愛玲」で第3回新潮社同人雑誌賞を受賞。'73年、平泉中尊寺で得度し、法名を寂聴とする。'92年に『花に問え』で第28回谷崎潤一郎賞、2001年に『場所』で第54回野間文芸賞など、受賞歴も多数。