「保護者から訴えもなかったので収束した」

「あれは6月の頭でした。『死にたい』と漏らすようになって……。そのころに1回だけ、ご飯を食べているときに、『学校に行きたくない』とポツンと言ったんです」

 子どもの口から何があっても聞きたくない「死にたい」という言葉。子どもを守りたい、救いたい一心で母親は、

「学校に行きたくないのならフリースクールがあると、命の大切さを説いたり、いじめる相手に嫌だと言ってみたらとかいろいろ話をしました」

 同時に学校へも相談の電話を再度かけたという。だが12歳の少年の「死にたい」という言葉に込めたSOSを、学校側は緊急の対応が必要だと受け止めなかった。罪深い。

「連絡して、息子が死にたいと漏らしていると伝えても、あいまいな返事をして『指導して様子を見ます』と言うだけなんです。電話じゃ全然聞いてもらえないと思い学校へ行き直接お願いしたんです」

 6月13日のことだった。母親は「席替えをしてほしい」と訴えた。学校側は「席替えをしたばかりだから、すぐにはできない」と杓子定規だった。それでも「6月末の期末テストが終わったら、席替えをする」と担任と教育指導の先生が約束したが、母親の訴えを重視していなかったことが、その後、町教育委員会に提出された報告書に残されていた。

 東北町教育委員会の漆戸隆治教育長は、

「『その後、保護者から訴えもなかったので収束した』との記載がありました」

 と明らかにした。訴えがなければ問題が解決したと報告する浅はかさ、無責任体質。聡志くんの死は、まさにそんな教育者への抗議の意味も含まれていたのではないか。

 何もしない学校、その結果、残されたのは、いじめによって人生を台無しにされたひとりの少年の死だ。失われずにすんだ命ではなかったのか。