古舘プロジェクト所属の鮫肌文殊、山名宏和、樋口卓治という3人の現役バリバリの放送作家が、日々の仕事の中で見聞きした今旬なタレントから裏方まで、TV業界の偉人、怪人、変人の皆さんを毎回1人ピックアップ。勝手に称えまくって表彰していきます。第6回は樋口卓治が担当します。

吉田羊 様

ドラマ、映画、CMにひっぱりだこの吉田羊

 今回、私が勝手に表彰するのは女優の吉田羊さんである。牛田モウでも吉田類でもなく吉田羊だ。

 大根仁監督の渋さ鋭さ全開の映画『SCOOP!』を観た。ハイエナのごとくスキャンダルを狙う男たちを束ねる副編集長・横川定子役が吉田羊だ。大根監督の繊細な演出、小道具の電子タバコをふかしイライラしながら男達を仕切る姿を見ると「この編集部、本当にありそう!」とグイグイ引き込まれる。

 二階堂ふみ演じる新人記者・行川野火を母のように見守り、一瞬見せる視線に女の情念を感じ、福山雅治演じる中年パパラッチ・都城静とのただならぬ関係がわかる。ワンシーンごとに観客が想像を働かせ脳内で自らの物語を構築してゆく。いい役者が揃ったいい映画の特徴だ。

 と、真面目な感想を書きたくなるくらい吉田羊の存在感はすごい。

 TBSテレビ『ぴったんこカン・カン』に安住アナとコンビを組んで居酒屋を放浪する企画がある。そば焼酎・雲海の一升瓶を抱えた途端、コメディエンヌさを発揮し、バラエティーにも居場所を作る。

 普通、女優がバラエティー番組に出ると、サービス精神ゼロの番宣臭を漂わせるのだが、吉田羊ははしゃぎすぎることなくいい感じのノリを見せてくれる。

 安住アナと漫才のようなやりとり。乾杯で、どっちのグラスが下か(目上の人と乾杯する時、少し下げて当てるのがマナーらしい)で、何度も乾杯をする。放送作家が台本に書けないアドリブで盛り上がるのだ。