ココだけは押さえておきたい“落語のいろは”
寄席に行く前にチェックしたい、落語ビギナーのための基礎知識を紹介!
■落語っていったい何?
「1人の人間が身振り手振りで複数の人間をしゃべり分け物語を展開する芸能」(前出・渡邉さん、以下同)
最後に「オチ」(さげ)がつく噺が多い。また本題に入る前、落語家は「マクラ」と呼ばれる世間話や本題に関連する小噺をして場を温めることもある。
■まず覚えたい3大用語
「高座」…寄席や劇場などで、演者が芸を見せるための一段高いところ。
「寄席」…“人寄せ席”の略。落語、漫才、講談、マジック、曲芸などの演芸を見せる演芸場のこと。
「色物」…寄席で落語以外に行われる大衆芸。かつて上演される演目を落語は黒、そのほかは朱墨で書いていたことが由来。
■東西で違いはあるの?
「発祥地が東京のものは江戸落語、大阪のものは上方落語と呼ばれますが、上方の噺を東京に移植、また、逆に東京の噺を上方に移植したものもあります。気風の違いから、江戸落語は武士や町人の噺、上方落語は商人の噺が多い傾向です」
また、上方落語は、三味線太鼓などの「鳴り物」が入る演目が豊富。「見台(けんだい)」と呼ばれる小机や足を隠す「膝隠し」など独自の小道具も登場!
■万能アイテムの扇子&手ぬぐい
落語で使う小道具は、主に扇子と手ぬぐいの2つ。これらをさまざまなものに見立てて客の想像力をかき立てるのだ。例えば、扇子は箸、刀、煙管(きせる)、竿(さお)などに変身。目線を使って長さを表現する。かたや手ぬぐいは本、財布、帳面など幅がある小物に化ける。
新作落語では、携帯電話を扇子に見立てたり、スマートフォンに入力する仕草を手ぬぐいを使って表したりすることも。
■無休の修業期間「見習い」「前座」
東京で落語家になるには、まず師匠を見つけて弟子入りし「見習い」からスタート。師匠についてカバン持ちや身の回りの世話をこなしつつ着物のたたみ方を覚え、落語の稽古(けいこ)にも励む。その期間、数か月。
次に、「前座」として寄席に出入りする前に、師匠から芸名をもらう。楽屋では掃除、お茶の用意や着付けの手伝いなどのほか、ネタ帳への記入、太鼓叩(たた)きなど寄席の進行に必要な作業も任される。加えて合間に当然、稽古も重ねなければならない。そんなめまぐるしい前座時代は、だいたい3〜5年とか。
■若手がひしめく「二つ目」とは
前座修業がすんだら、「二つ目」に昇進。
「羽織を着ることも許されます。毎日寄席の楽屋に行く必要がなくなり、高座の数も減る。昇進したてのころはご祝儀の仕事が増えますが、それがなくなってからは自分で仕事を探さなければならなくなります」
二つ目の期間は8〜11年ほど。どうセルフプロデュースしていくかが重要だ。
■誰もが憧れる「真打」って?
落語家の最上位が「真打」。周囲の許可が出ると晴れて昇進、寄席で最後に出演する資格を得られる。トリを務める実力の持ち主、というわけ。
「ただし、真打はゴールではありません。落語家に引退はないので、どこまでいっても現役。芸を磨き続けなければならないのです」
真打になるまで平均15年。そこから先も厳しい鍛錬を重ねていくのだ。