復興とともに開く被災地間格差

 南三陸町志津川の学習書道教室経営、佐々木光之さん(53)は、まだ仮設住宅に住んでいる。高台の志津川高校の下に自宅があったが、津波に流された。

 復興政策の中心は、防潮堤建設と防災集団移転促進事業──いわゆる高台移転のセットだ。もとの土地を町が買い取り、高台の区画に住居を建てる予定だった。

佐々木さんの自宅があった場所。津波にのまれたが、再びここに建てる
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 ところが、自宅付近は、防潮堤ができても津波がくる恐れがある「災害危険区域」の指定を受けなかった。そのため、もとの場所に自宅兼塾の教室を建てることになる。

「自営業で、年齢のこともありローンは組めない。老後のための貯金を切り崩せる範囲で建てられる住宅を建てるしかありません」

 さらに人口減少が追い打ちをかける。南三陸町は宮城県内で女川町に続いて人口減少率が高い。塾の生徒も減っている。震災前は、書道と学習塾とで延べ300人。震災後は最大で23人。現在は19人に減った。

「習い事は節約の対象。生活のためには切られる」

 最近も、復興住宅に入るので、塾を辞めるという話があった。仮設住宅と違って、収入に応じて家賃が発生するためだ。

 高校卒業を機に地域を離れるという話も聞くが、高校入学でそうした現象も出ている。町内には志津川高校があり、中高一貫をとっているが定員割れが続く。他地域の高校に通学する場合、交通渋滞が心配で、引っ越す場合もある。

「他地域への進学の場合、BRT(バス高速輸送システム)で通学します。しかし、渋滞で1時間目に間に合わないこともある」

 前谷地駅(石巻市)と気仙沼駅(気仙沼市)を結ぶJR気仙沼線も被災。予算の関係もあり、鉄路での復旧を断念。専用レーンを使ったバスでの復旧とした。だが、復旧していない区間は一般道を使う。復興作業員の通勤などで渋滞する。

 書道の指導を通じ、子どもたちの様子も変化しているのがわかると佐々木さん。

「震災の影響か、小学生の集中力がない。震災前と違って、長時間書いていられないし、枚数も書けない。すぐに疲れる。自宅が残ったかどうかが問題ではなく、長期の仮設暮らしが要因ではないか」

 町によると、復興住宅は年度内に739戸のすべてが完成予定だが、高台移転には時間がかかる。区画が決まっても、人員不足のため、すぐ着工はできない。