もしも親やパートナー、あるいは自分自身が、認知症と診断されたらどうするべきか。おそらく40代、50代の人の多くが考えることを先延ばしにしていることだろう。しかし、近い将来、「5人に1人が認知症」になる時代がやってこようとしている。身近な存在がいつ認知症を発症しても、おかしくない状況になりつつあるのだ。

 にもかかわらず、人々の危機感はいまだに薄い。実際には、診断されてからでは手遅れとなってしまう手続きもあるというのに。

ボケてからではもう遅い

『なぜか笑顔になれる認知症介護』(講談社ビーシー刊)の著者である奥野修司氏は、これまで多くの当事者や家族を取材し、認知症のリアルな実情や問題点を見つめ続けてきた。なかには、十分な知識がないために、不幸になる当事者たちもいたという。

 だからこそ、親の介護が視野に入ってくる40代から認知症に向き合い、準備をしておくことが大事なのだ。今回は本書をもとに、後悔しないためのエンディングノートの作り方を紹介する。

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「40代からエンディングノートだって? 冗談じゃない。俺はまだそんなものを書く年齢じゃないよ!」

 たいていの方はそう言われる。だが、ちょっと待ってほしい。エンディングノートに向き合うのは、自分自身のためというよりも、今後、介護を要する可能性がある親のことを知るため、と理解するべきだろう。

 本来、親が自分で作ってくれればいちばんありがたいが、現実にはほとんど書かない。臓器提供カードに○印をつけられないのと同じで、未来を決めてしまうことへ恐怖があるからだろう。エンディングノートは、遺言書ではないから法的な拘束力はない。親が語ったことを子どもが書いてもいいし、子どもが自分のエンディングノートを作成してみせ、さりげなく「親父も書いてみないか」と誘うのもひとつの手だ。

 エンディングノートというと、葬式や墓、延命措置がどうのこうの、といったことを記すものと思われがちだが、特定非営利活動法人『エンディングノート普及協会』(広島県福山市)の赤川直美理事長によると、本当のエンディングノートは「最期まで自分らしく過ごすためのもの」だという。

 書かなければ家族が困り、書いておけば、たとえ認知症になっても、本人が楽になって家族の介護も軽減する──。また、実際にエンディングノートを綴(つづ)ってみると気づくことがいっぱいあり、なかでも、定期預金と生命保険に関する内容は重要だという。

「今の高齢者は、たいてい生命保険をかけているし、お金を定期預金にしています。認知症の症状が進んで判断能力がなくなり、自分で名前が書けないと、定期預金は満期になっても更新も、解約もできません。法定後見人がつかない限り、持ち主が亡くなるまで誰も手をつけられなくなります。定期は概(おおむ)ね70歳を過ぎたら解約し、保管方法については、エンディングノートに記しておくことです」(赤川理事長・以下同)