目次
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ー 事実もしっかりと伝えたい
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ー 戦争が持つ悲惨な面を伝えないといけない

 

 第2次世界大戦後、連合国軍占領下の日本に駐留していた兵士と結婚した日本人女性「War Bride(戦争花嫁)」とその夫の、本当にあった愛の物語が舞台化される。戦争花嫁の桂子(奈緒)の夫で米兵のフランクを演じるウエンツ瑛士に話を聞いた。

事実もしっかりと伝えたい

何も知らずに“戦争花嫁”という言葉だけを受け取ったときには、きっと悲しい意味のある言葉なんだろうなと思いました

 と、“戦争花嫁”という言葉の第一印象を語る。戦争花嫁は約4万5000人いたといわれており、当時の報道によって娼婦・売春といった誤解と偏見を世間に植え付けられ、差別を受けていた。

調べていくと、戦争花嫁と呼ばれた人々の中には、それをポジティブな意味合いに変えようとしている人も、もう聞きたくない言葉だという人もいました。僕らが歴史として知る言葉と、それを実際に投げかけられた人の中では印象も違うのだと思いますし、その事実もしっかりと伝えたいです

 舞台化にあたり、奈緒が渡米し桂子さんに実際に会って、キャスト陣にその印象をシェアしている。

「奈緒さんの話を聞いて、夫婦の絆が強いと再認識しました。フランクはきっと、寂しがりやで、甘えん坊で、真っすぐ。そして、それを惜しみなく吐露できる夫婦の関係性があった。

 一方で、桂子さんはそんなフランクを強く頼っていた部分があると想像できます。惜しみなく感情表現をして、愛も寂しさもすべてさらけ出す、日本人とは違うアメリカ人特有の感覚も、舞台上に持っていければいいなと思っています

 ウエンツ自身も、自分をさらけ出せるタイプだという。

「僕ってさらけ出しているほうなんだ、と人に言われて気がつきました。自分では意識したことはなくて、幼少期からアメリカ人の父を見てきたからかもしれません。

 フランクもそうですが、これを言ったら恥ずかしいなとか、男だからここは我慢するべきとか、そういうのはまったくないんです。そういう意味では、みんなの前で、奈緒さん相手に僕が自分をさらけ出せるかどうか。もちろん、そうしますけどね(笑)

 2018年から約1年半、イギリスに留学しているウエンツ。文化の違う異国の地で生活をするという意味で、桂子さんに共感する部分はあるかと尋ねると、

「まったく違う覚悟だと思います。僕は自己実現のために行った留学で、言ってしまえば好きなときに帰ってくることもできました。桂子さんは、愛を求めて、国境を越えて、二度と家族と会えなくなるかもしれないという覚悟を持った渡米ですから。

 まず、桂子さんに“文化の違いを乗り越える”という感覚があったのかどうか。生きることで精いっぱいとなると、文化という言葉さえも浮かんでこないんじゃないかと思います