どこからどこまで?曖昧な「五輪予算」

 そもそも東京五輪の運営費をどのように試算するのかは難しい。小川さんは、「東京五輪が開かれなければ、使うことがなかった予算」と定義する。

 バドミントンや近代5種の会場となる『武蔵野の森総合スポーツ施設』(調布市)は都が独自に整備する施設。五輪招致の決定前から多摩地域のスポーツ拠点施設として決まっていた。そのため厳密にいえば五輪関係予算ではないが、この建設費も関連予算に含まれている。

 昨年11月、IOCと都、国、組織委の四者でコスト削減が話し合われた。ボート・カヌー競技が行われる『海の森水上競技場』(江東区)、水泳が行われる『オリンピック・アクアティクスセンター』(江東区)、バレーボール会場として整備される『有明アリーナ』(江東区と大田区が帰属調停中)は新設することになったが、400億円の削減という試算が出された。

 一方、新国立競技場は、

’19年のラグビーW杯で使用するために改修の予定で、招致段階では予算に含まれていない。しかし、設計段階で議論が巻き起こったために、W杯開催には間に合わず“五輪のため”の施設となった。

 新国立競技場の建設費は1550億円程度。設計・監理費と解体費用を含めて1581億円。このうち半分は国の税金、残り半分は東京都と日本スポーツ振興センターで同額を負担する。つまり、国は約800億円、都は約400億円を税金から捻出することになる。舛添要一・前都知事のときに合意したもので、これを小池都知事も引き継いだ。

 四者合意では「恒久施設」は3450億円で、都と国の負担だ。うち、都の負担は2250億円。新設する3会場のほか新国立競技場の建設費用も含まれている。また「仮設、エネルギー、テクノロジー、賃借料」に4900億円の負担を試算しているが、仮設施設は設計段階のため、詳細は決まっていない。

「例えばセキュリティーのために監視カメラをつけるとします。これが恒久的なものとして使われるのか、仮設の整備になるのかは今後、調整します」(事務局)

 仮設は五輪が終われば撤去される前提だが、

「使ったものを捨てるのではなく他事業に使えないのか。そもそも、どういう仮設にするのか議論されていません」(小川さん)

 東京五輪は小池都知事の就任前から決まっていた。就任後に改善できる幅は狭い。また、復興五輪との名目もあるが、被災者のひとりは「被災地にはまったく還元されていない」と怒りを隠せない。

 経費削減では成果があがったとはいえ、都民・国民が納得する五輪のあり方とは何か、模索する必要がある。

取材・文/渋井哲也…ジャーナリスト。『長野日報』を経てフリー。自殺、いじめ、教育問題など若者の生きづらさを中心に取材。近著に『命を救えなかった─釜石・鵜住居防災センターの悲劇』(三一書房)がある