「父親は3年前に死にました。そのまま自宅に置いています」

 8月23日夕方、東京・練馬区役所に生活保護受給の相談に訪れた男のひと言で事件が発覚した。警察官が自宅を調べると、浴槽のふたの上には8つのポリ袋に分けられた白骨化した遺体が置かれていた。

 遺体を「父だ」と話したことから、警視庁は同24日、死体遺棄容疑で無職の竹田英俊容疑者(45)を逮捕。

 同容疑者は父親の遺体と3年間、一緒に暮らしていた。

 さらに驚くのは逮捕時の服装。胸元に赤いスカーフがついた紺色のセーラー服姿だった。「駅前で見た」「店の前を歩いていた」など目撃証言は多く、近所でも話題の人物だったのだ。

「セーラー服を着だしたのは今年になってからです。以前から女性の洋服を愛用していたわけではないと思います」

 と、同じ団地に住む60代の女性、Aさんは話す。近所のコンビニ店の女性店員も、

「セーラー服は拾ったもののようで、毎日着ていました」

 では竹田容疑者の生い立ちはどのようなものだったのか。

 近所に住む女性によると、母親は30年以上前に家を出て、父と子の2人暮らし。同じ団地に住んでいた叔母に育てられた時期もあり、複雑な家庭環境だった。叔母の引っ越し後、再び父親と暮らしていたが、竹田容疑者と同じ団地に住む住人は「顔も知らない」と口をそろえる。

 唯一知っていたのは80代の男性、Bさん。

容疑者宅のベランダ。洗濯物は数年間、干しっぱなしで、洗濯機には植物が付着していた

 しかも、竹田容疑者は過去にBさんとの間でトラブルを起こしたことがあったのだ。

「3~4年ほど前のこと。ある日突然、竹田容疑者が家の扉を蹴ってきたんです」

 理由を尋ねるBさんに、竹田容疑者は逆ギレ、最終的には父親が謝罪し、おさまった。

「その後、オヤジさんの姿が見えなくなったので心配していました」(前出・Bさん)

 父親の居場所を尋ねた団地の人もいたが同容疑者は「入院しています」と答えるだけ。

 このころから竹田容疑者の「奇行」が目立ち始める。

 食事は屋外。アパート前の縁石に腰かけてパンをかじり、入り口付近にある共用の水道で水を飲んでいた。前出のAさんには「気分転換に」と答えたというが、

「いま思えば遺体がある室内にいたくなかったのかもしれないですね」(Aさん)

 生活も困窮し、今年の冬、「2000円貸してほしい」と頼まれた男性もいた。また「店のトイレでヒゲを剃ったり身体をふいたりは日常的」で、店員も客も困惑していたことから近所のコンビニは出入り禁止になっていた。

 竹田容疑者には親しい人もおらず、居場所もなかった。

 報道では父親の遺棄理由が「死んだら一緒にいていいよ」との遺言からだったことが明らかになった。それは長年一緒に暮らせなかった後悔や、息子を案ずる親心からの言葉だったのではないのか。

 練馬区の福祉事務所は、

「民生委員も見回りはしていますが本人や近所から相談がないと動けない場合もあります。貧困や孤立しても福祉のセーフティーネットに引っかからない人も確かにいます」

 竹田容疑者はセーラー服姿で街をさまよっていた。周囲に発信するSOSだったのかもしれない。