不可解な証言の反面、饒舌なときも

 筧被告が昨年受けた精神鑑定では軽度の認知症が指摘されたものの、刑事責任能力と訴訟能力には問題ないとする判定が出ている。

 しかし、逮捕から約3年、拘禁生活が続いた影響だろうか。認知症は公判中も進行しているようにみえた。

 まず、時系列がメチャクチャだった。逮捕よりずっと前の事件を審理しているとき、

「すぐ逮捕されたからわかりません」

 と、事実関係を間違え、中川裁判長から、「逮捕されたのはそのときではないのでは」と諭された。

 ある日の公判では、お昼休みを挟んで午後の再開時、弁護人が「午前中に何をしたか覚えていますか」と聞いたところ答えられなかった。

 さらに弁護人が、

「お昼は何を食べましたか」

 と質問すると、

「記憶に残るようなもの食べてません」

 と言い放った。

 不可解な証言の反面、常に饒舌だった。以下は検事との印象的なやりとりだ。

─結婚相談所で(日置稔さんと)お見合いしたときから殺そうと思ってたの?

「私、そんな恐ろしい女に見えますか!?(怒った口調で)」

─罪を犯さないためにはどうしたらいいか。

「教えてください。わからない」

─被害者やご遺族への思いは。

「1日も早く(私を)死刑にしてください。それだけです」

─慰謝料を払うか。

「(食ってかかるように)年金生活で払えますか。また人を殺せというのですか」

─本田(正徳)さんと知り合ったきっかけは。

「覚えてません。先生は昔の彼女のこと覚えてますか?」

─結婚相談所で知り合ったのではないか。

「わかってるんやったら、なんで聞くの」

 まるで人を食ったような返答だった。