僕自身は嫉妬心があまりないんです

 ハイドを演じるのに、石丸さん自身も自分の中の“嫉妬心”や“恨み”といったネガティブな感情を呼び起こしたりするのだろうか?

僕自身は非常にお花畑な人間ですので(笑)、嫉妬というような感情はあまり湧かないんですよ。妬(ねた)むより、“ま、しょうがないか”とあきらめてしまう。そこで勝負をしようというふうにはならなくて、“自分がもっとポジティブでいられる方向に心を持っていこう♪”というタイプの人間なんです。

 だから、ネガティブな感情は、海外の映画に出てくる凶悪犯を見たりして、想像して作ります。例えば『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクター博士とかね。自分からかけ離れた性格の役を演じるほうが、想像しつつ作れる部分が大きいので面白かったりもするんですよ」

 石丸さんの役作りが印象的なのは、黒いハイドに対して、ジキルが白ではなくグレーであるところ。

僕はジキルを普通にいる、人間らしい人間として演じたかった。真っ白な人間なんていないですよね。ジキルは非常に強い好奇心と正義感、そして旺盛な自己顕示欲を持っている。自分が科学を変えていっていると思い込んでいて、そこから来る驕(おご)りがあるんですね。ルール違反すれすれなんだけど、自分の中では正しいと思っている。そんな、周りの人間の目には“あいつの思想はどこかおかしい”と映るところからグレーだし、彼の面の皮をペロッと剥(は)がせばすぐ、そこにハイドがいるんです」