睡眠が減ることが原因ではない!

 家庭での学習時間で、成績に影響を与えそうな要素といえば睡眠時間。スマホを使っている時間が長くなれば、そのぶん睡眠時間が短くなることが成績低下につながっている可能性があると考え、川島先生のグループも調査しました。

 しかし、【図2】のグラフを見るとわかるように、スマホを1日4時間以上使う子どもは、“睡眠時間にかかわらず”スマホ使用時間が短い子どもよりも成績が低いという結果が出ています。

 つまり睡眠時間はスマホを長時間使うと成績が低下する直接的な原因ではないといえます。

【図2】睡眠時間に関係なく、スマホなどの使用時間が長くなるほど平均点が低くなる傾向に
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驚くべき“ながら勉強”の実態

 スマホを使うとなぜ、勉強をしていても成績は低下してしまうのでしょうか。

「ひとつには“ながら勉強”の実態があります。仙台市の独自調査、平成28年度のデータ(【図3】)を見ていくと、小学生でもスマホを所持すると半数以上が自宅学習中にスマホを操作していることがわかりました。

 それでもまだ調べものなどに使っているのではないかと淡い期待もしましたが、実際には全く違いました。まず、最も多かったのは音楽を“
 聴きながら”の勉強です。私が子どものころから、ステレオなどで音楽を聴きながら勉強するという人は少なからずいたので、その是非は別としてもまだ理解の範疇でした。

 しかし、【図4】のグラフを見るとわかるように勉強中にゲーム、動画の視聴、LINEをしている子どもが大勢います。それも1度に3つ4つのアプリをマルチタスクで使いこなしている子どもも少なくありません。

 認知脳科学的には、人の脳はひとつのことに集中するようにできており、逆に集中の邪魔になる情報には脳の中で自動的に抑制がかかることはよく知られています。

 つまり、勉強に集中すればゲームなどはできませんし、ゲームに集中力をさけば勉強は手につかないのは当たり前です」(川島先生)

【図3】勉強中のスマホ使用率
【図4】家庭学習中に使うプログラムの種類。1度に3つ、4つのアプリをマルチタスクで使いこなしている子どもも少なくない

 

 LINEなどのインスタントメッセンジャーであれば、常にスマホを触っているわけではないので、よいのではないかと思うかもしれません。しかし、実際にはインスタントメッセンジャーは著しく学力に影響するといいます。

LINEなどはメッセージを直接、確認しなかったとしても着信音が聞こえただけで、作業中の情報処理・動作速度と注意力が下がることが明らかになっています。

 この傾向は社会不安傾向が強い生徒ほど顕著で、『早く返信をしなければ嫌われてしまう』『話についていけなくなってしまう』といった、学校などでの人間関係の不安が、集中力低下につながるのだと考えられています。

 さらにいえば、たとえメッセージが入らなくても、勉強中に電源を入れたままスマホを机の上に置くだけで、成績に悪影響を及ぼすことがわかっています」(川島先生)

 インスタントメッセンジャーに関しては各国で調査が行われており、長時間使用する学生は教科書などを読むときに注意散漫になりやすい、試験問題を解くために余計に時間がかかるようになるといった報告が上がっています。

 また、先に紹介した家庭学習や睡眠時間との関連グラフ(【図2】)では、非所持群よりも1時間未満使用群のほうが成績がよかったのですが、LINE使用時間との関連をみると「まったく使用しない」子は、「1時間未満使用」よりも成績がよいという結果になりました。

 つまり、LINEなどのインスタントメッセンジャーは短時間使用でも成績に影響するといえそうです。

「LINEなどを使う子どもはマルチタスキングをする傾向が強いという結果があります。研究によれば、たびたび行う人は作業記憶力が低下することもわかっています。作業記憶は学習や記憶、理解など広範囲でかつ大切な認知機能と直接関係しているため、作業記憶力が低下すると当然、学習効率も極端に悪くなります」(川島先生)