エアコンプレッサーのイメージ写真。事件では、工場備えつけのタイプが使用されていた。ネジ締めなどDIYにも使われる

 それにしても、そんなに簡単に人間は死んでしまうのか。エアコンプレッサーによる事故の症例を知る、東北大学病院高度救命救急センターの久志本成樹医師は、

「肛門から腸に空気が入っただけでは窒息死はしません。ただし、空気の逃げ場がなくなると腸が破れ、体内に漏れ出ることがある。

 空気はお腹などにたまり、その圧力が高くなると肺も圧迫されて呼吸ができなくなる。口から空気が入っても肺が破れることで呼吸ができなくなることも。いずれも心停止になることはありえます」と指摘する。

 石丸さんは3人兄弟の長男で独身。両親と三男との4人家族だった。自宅を訪ねて取材を申し込むと、親戚とみられる女性から、「話すことはありません」と断られた。

 石丸さんの両親は、息子の死を周囲のわずかな人にしか知らせていない。あまりに不憫な最期だったから……。

「息子のお腹はパンパンに膨れ上がって」

 石丸さんを知る女性は「とても親孝行な青年です」と、その人柄を偲んだ。

「両親が出かけたい、って言えば運転していろいろなところに連れて行ってあげていましたし、近所の雪かきも率先してやっていました。まじめで穏やかな本当にいい息子さん。両親をうらやましく思ったこともあります」(同女性)

 孝行息子を奪われた母親は一見、平静に見えるという。

「落ち着いているように見えますが、涙を流すこともできないほど悲しんでいるんですよ。お母さんは最初、息子さんの死を周囲には“事故”と言っていたみたいです。

 でも話をしているうちに様子が変わってきて“違うの!”って。“何が違うの?”と尋ねると、首を手で切る動作をして“殺されたのよ”と吐き出すように言い放ったそうです

 病院で息子の遺体と対面したとき、ただの事故ではないと直感したとみられる。

「“息子のお腹はパンパンに膨れ上がって……”と、お母さんは話していたそうです」(前出の女性)

 石丸さんは約10数年前、職場での無理がたたったのか突発性難聴で左耳が聞こえなくなった。それでも仕事を辞めることなく耐えた。