このころ晴海さんは校長に、いじめによる不登校は「いじめ防止対策推進法」の「重大事態」にあたるとして、法に従った対応を求めていた。重大事態と認定された場合、調査委員会を設置することになる。しかし、市教委はいじめと認定することはなく、学校も市教委も対策に向けて積極的に動くことはなかった。

 晴海さんが文科省に連絡すると、文科省は県教委とともに、市教委へ「重大事態」として対処するよう何度も求めた。その影響か、11月には校長が「指導不足だった」と昌之くんに謝罪している。

どこまでもいじめを認めない学校側

記者会見に臨む母・晴海さん。昌之くんと行った情報公開請求で明るみに出た事実は多い
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 しかし、学校は「いじめ」を認めない。交渉を重ね、ようやく学校は晴海さんと話し合いを持つことになったが、それでも校長は「いじめはない」と市教委に報告するなど不適切な対応が繰り返された。

 さらに'17年1月末、サッカー部の保護者会で、学校側は「いじめはなかった」と説明している。隠蔽や沈静化を図ったかのようだ。

 2月になって、市教委は調査委員会(委員長、米津光治・文教大学教授)をようやく設置。昌之くんと晴海さん、サッカー部員や学校職員から聞き取りをした。市教委も、部員や学校職員に聞き取りを行っている。

 3月28日、市教委は校長、教頭とともに、昌之くんと晴海さんに対し、学習面の遅れの対策やいじめ対応における「今後の支援体制について」を提示した。だが、現場教員に指示していなかったことが卒業直前に発覚している。

 6月には、調査委員会から「社会通念上の判断」でいじめを調査すると、晴海さんに連絡が入った。

 法律上、いじめは「一定の関係がある児童・生徒」間で起こり、「心理的または物理的な影響を与える行為」とされ、いじめられた児童・生徒が「心身の苦痛を感じているもの」。一方、「社会通念上」のいじめは「弱いものに対する」「継続的」などの要素を含み、法律より狭い概念を指す。

 そのため、文科省と県教委は市教委に対し「そもそも法の理解が間違っている」「よく理解しているとは言い難い」と指摘、県教委が指導に入っている。

 9月、昌之くんは文科省あてに手紙を書いた。理不尽な大人たちへの叫びがこうつづられている。

《僕は何も悪いことをしていないのに、どうして守ってくれる人たちから嫌な思いをさせられるんですか》