キャンサーペアレンツ代表・西口洋平さん(38)

「僕だけじゃないんだ、と思いました。子どもが小さいと仕事を辞められないし、どう伝えるかっていう問題もある。みんなどうしているんだろう? 単純にそういう話がしたいと思いました」

 2016年4月、西口さんは、SNSを使った交流サイトを立ち上げる。最初は、たったひとりで始まった会だったが、マスコミやネットニュースで取り上げられ、会員数が増えていった。

 オフ会も開いてみると、会員同士ふみこんだ会話ができるようになり、ネット上でのやりとりも活発になった。

 子どもを連れてくる人もいるため、家族同士のコミュニケーションも広がっている。

 活動を通して、西口さんの家族との関係も変化した。

「妻が普通に接してくれるようになりました。変に気を遣われるより、そのほうがありがたい。“しんどいときは僕から言うから”って、妻には伝えています」

 子どもが小学生になり、ようやく自分ががんであることを話すことができた。

病院のベッドの上でげっそりやせた姿ではなく、元気に仕事復帰してから話したので、子どももそれほど深刻には受け止めませんでした。

 今、4年生ですが、図書館から借りてきたがんの本を、読み聞かせしてくれることもあります。ふだん、がんの話はしないんですけど、子どもなりに気にかけてくれているんですね」

 現在、『キャンサーペアレンツ』は、2000人を超える大所帯となっている。

「活動を続けていくうちに、僕のベクトルも変わりました。いまだ社会には、がんに対する偏見や誤解があり、患者は生きづらさを抱えている。それを今変えなければ、将来もし子どもががんになったときに、また同じことが繰り返されると思ったんです」

 かつての患者会は、がんの種類別に分かれ、情報交換をするのが主な目的だった。が、SNSの時代になり、ひとりひとりの声が発信できる今の時代だからこそ、みんなでつながって形にしていきたいと西口さんは語る。

「この活動が、僕のエネルギー源になっていることは間違いありません。出会えるはずのない多くの仲間たちができた。がんになってよかったとは決して思わないけれど、数少ない喜びのひとつにはなっています」


西口洋平さん ◎キャンサーペアレンツ代表 35歳で、胆管がんのステージ4と判明。手術はできなかったが、働きながら、週1回の抗がん剤治療を続けている。2016年4月、『キャンサーペアレンツ』を設立。現在、会員数は2100人となった。