生活保護受給者の描く未来は

 若い生活保護受給者に話を聞いた。神奈川県出身の池田義正さん(42=仮名)は14歳のときに母親をがんで失い、学生時代からヤンキーだった。その延長で暴力団に入った。

「しのぎで覚せい剤の売人をやったんです。やがて逮捕されたんですが、初犯で執行猶予期間中に再犯したので、結局は3年半、網走刑務所に入ったんですね」

 と池田さんは話す。

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 出所後は、組に愛想をつかして、警察に脱退届を提出。28歳のときだった。堅気の鳶職人となり、東京や大阪で暮らしていたが、徐々に黄疸や身体がだるいなどの症状が出るようになった。

「よくあるケースですが、売人時代に覚せい剤が安く手に入るので、自分でもときどき打っていた。その後遺症です。酒で麻痺させるなどしてごまかしていたんですが、どんどんひどくなって……。

 売人時代は若かったので、覚せい剤を売ることをなんとも思わなかったのですが、自分がこんな目にあって初めて“覚せい剤は人間をダメにする。クソだな”と思うようになりました

 と池田さん。

 仕事ができなくなって1年前から生活保護を受けるようになった。ここでは若手ともいえる池田さんは、将来をどう見つめているのかーー。

「まずは身体を治して、五輪のころには山谷にいないようにしたい。父はボクが24歳のときに60歳前で病死しているんですが、食べ物関係の仕事に就いていたんですね。ボクも食べ物が好きなので、いずれはタコ焼き店をやりたい。結婚ですか? それよりもまずは仕事をして自立したい」

 と池田さんは語った。

(フリーライター山嵜信明と週刊女性取材班)


《PROFILE》
やまさき・のぶあき ◎1959年、佐賀県生まれ。大学卒業後、業界新聞社、編集プロダクションなどを経て、'94年からフリーライター。事件・事故取材を中心にスポーツ、芸能、動物などさまざまな分野で執筆している