業界の掟を破り、孤軍奮闘!

「このパソコン、私と一緒で鈍行だからね。立ち上がりが遅いのよ」と京子さん
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 京子さんが行っている不動産仲介業は、売買した物件の額に応じた手数料が収入となる。通常は買い主と売り主の両方から3パーセントの仲介手数料をもらう。例えば、3000万円の物件の場合、片方の手数料だけで消費税を含めて100万円近い。

「ほとんどのお客様はコツコツ貯めたお金を頭金にして購入するので、何とかしてあげられないかなと。100万円あったら、1ランク上の物件にも手が届きますよね。それで、買い主様からは手数料をいただかないことにしました。うちの利益は半分になるけど、私が2倍働けばいいわと」

 いわば業界の掟(おきて)を破ったわけだ。手数料を多少値引きする業者はいても、最初から片方を無料にしてしまう業者はいない。

 お客には喜ばれたが、同業者からはさまざまな嫌がらせをされた。

 売り主に電話をすると、まだ売りに出ているのに「そんな物件はない」と断られたことが何度もある。和田京子不動産を通じては売りたくない、業界から締め出してやろうと意地悪されたのだろう。

 最初に成約したときも、売り主の不動産会社から手数料を値切られた。売り主から手数料をもらえないとタダ働きになるのを知ったうえで、全額踏み倒そうとする会社もあった。トラブルが続き、契約時には顧問弁護士に同席してもらうようにした。

 孤軍奮闘していると、思いもよらないところからチャンスが舞い込んだ。

 ある日突然、テレビ局のディレクターを名乗る男性から電話がかかってきた。京子さんにバラエティー番組に出てほしいという依頼だった。

 京子さんを知ったきっかけはYouTubeにアップされている和田京子不動産の広告動画。会社の設立時、少しでも知名度を上げようと昌俊さんの発案で作った動画をアップから3年もたって、スタッフが偶然、目にしたという。

 ところが、京子さんは頑として出ないと言い張る。

「私ね、ただでさえブスで、写真を撮られるのも嫌いなんです。テレビに映って、みなさんに顔を見られるなんて、とんでもないって」

 このチャンスを逃したら会社の未来はない。そう思った昌俊さんは懸命に祖母を説得した。洋子さんは詐欺だと疑い、最後まで半信半疑だったと振り返る。

「撮った後に、料金を払えと言われるんじゃないかとか心配で(笑)。当日、ロケバスが着いて、タレントの森三中さんの顔を見たときは、本当にビックリしました」

 2013年7月。80歳で起業した「不動産屋らしくない不動産屋」としてテレビで紹介された。すると、ほかの番組などからも取材が相次ぎ、たちまち有名になった。

 お客からの依頼は絶えなくなり、開業5年目には年商5億円に達した。